2018年 韓国 116分
監督:キム・ミンホ
出演:マ・ドンソク
拳で戦うキレテル親父。 ★★★
このポスターの目力を見てほしい。
こんな男に眼をつけられたら、もう、ご免なさいと言って逃げるしかない(笑)。
キレた親父と言えばリーアム・ニーソンだったり、スティーブン・セガール。
しかし彼らは元CIAであったり海兵隊員であったりして、武器を使って戦うことも多かった。
今作のキレた親父はただの市井の人。
だから武器は使わない。ひたすら己の肉体だけで戦っていく。熱いぞ。
主人公のドンチョル役はマ・ドンソクという人。
まったく知らない俳優さんだったが、まあ、イケメンとはほど遠い粗野な風貌。
身体はそれこそラグビー選手かというようながっしりしたもので、こりゃたしかに肉弾戦は強そうだなと思わせる。
ドンチョルはその世界では名が知られた暴れん坊だった。あだ名は“雄牛”。
そんな彼は、女神のような女性ジスと知り合い、今は魚市場で真面目にこつこつと働いている。
暴れん坊ドンチョルも愛するジスの前では肩をすぼませて尻に敷かれている。
しかしある日、ジスの美しさに目をつけた悪党が彼女を誘拐する。
半狂乱になるドンチョル。
おのれ、ジスに何かあったら許さんぞ。
誘拐犯は身代金を要求するどころか、大金を寄こしてくる。そして、この金をやるから奥さんのことは忘れろ。
何だ、この野郎は? おのれ、ジスを返せ。
警察なんかあてにはならん、俺が自分でジスを取り戻すぞ。邪魔する奴はみな叩きのめすぞ。
ドンチョルを兄貴と慕う若者と、腕は良さそうなのだがどこか頼りなさげな探偵を引き連れて、彼はジスを探し求める。
この二人がコミカル部分の担当で、好い味を出している。
誘拐犯のボスが嫌味な奴。
掠ってきた美女たちを、さらに客の好みで整形手術して売り飛ばす。なんて奴だ。
悪逆非道、部下の失敗にも容赦はしない。それでいてどこか小心者で小者っぽいところが妙な味になっていた(宇崎竜童を思い浮かべたのは私だけ?)。
さてこの映画の見所は、タイトルにもあるとおりのマ・ドンソクの無双ぶり(原題は「怒れる牡牛」)。
情報を得るために危ない場所に乗り込んだときに、5人の用心棒がかかってくる。
こんなおっさん、簡単に追い払ってやるぜ。
ところがドンチョルの鉄拳は用心棒たちをあっという間にのしてしまう。
これなんだなあ、この映画の見所は。
とにかく敵がナイフを持っていようが斧を持っていようが、ドンチョルは己の拳と怪力で相手を叩きのめす。
ただのおっさんを相手にしたつもりだったのが、実はとんでもないキレたおっさんだったわけだ。
映画の最後、蟹の輸入話にのっていたドンチョルがめでたく事業に成功するオチが付いていた。
ここまでくるとあまりにお伽噺風だったけれど、気持ちよく観ることができたからOKとしよう。
この映画のタイトルで観ようと決めた人なら、裏切られませんよ。