あきりんの映画生活

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「記憶にございません!」 (2019年)

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2019年 日本 127分
監督:三谷幸喜
出演:中井貴一、 ディーン・フジオカ、 小池栄子、 石田ゆり子

政治コメディ。 ★★★

 

史上最悪のダメ総理大臣の黒田(中井貴一)は、暴漢の投石を頭に受けて記憶喪失になってしまう。
自分は誰? あなたは誰? ここはどこ?
文字通りに「記憶にございません」状態なのだが、某総理大臣の責任逃れのお決まり答弁をうまく茶化していた。
脚本/監督の三谷幸喜も、本作ではなかなか好いではないか。

 

暴君だった権力者が急死したり、病に倒れたりして、そっくりさんがその身代わりを務めるという設定の映画は時にみる。
韓国映画「王になった男」とか、インド映画「プレーム兄貴、王になる」とか・・・。
どれも身代わりの方が本物よりも好い人、というのがお約束である。
本作は、本人自身が記憶喪失で別人のようになるところがユニークだった。

 

さて暴君だった黒田総理だが、記憶を失ってからは絵に描いたような好い人になる。
というか、人の上に立つ人は本来は、謙虚で、思慮深くて、物事への広い配慮ができなくてはならない。
それが基本であるべきなのに、記憶喪失になってからの黒田がそれをおこなうと周囲はみんなびっくりする。
ということは、今までの権力者が基本とは正反対だったってことか。

 

中井貴一はもともと善人ぽいイメージの人なので、好い人になってからに違和感はまったくなかった。
しかし、記憶を失う前の暴君時代の中井は、どうみてもむりやり感があって似合ってはいなかった。

 

3人の側近秘書が記憶を失った黒田を助けて(周囲をごまかして)、なんとか総理大臣の仕事を続けていく。
秘書頭のディーン・フジオカも好かったのだが、今作ではなんといっても小池栄子が好かった。
おどおどとしながらもすっかり好い人に変わった黒田を、凜とした感じで支えていく。

 

面白かったのは、小池栄子が黒田と並んで歩いているときに、ここでいつも総理は私のお尻を撫でました、と言って立ち止まるところ。
三谷幸喜らしい上品な下ネタである。
また小池は、無茶ぶりをする総理夫人(石田ゆり子)(このイメージは、ミーハー的に騒ぐのが大好きだった某総理夫人をモデルにしているのだろうな)の代わりに、カメラの前で珍妙なダンスをして見せたりもする。
好いねえ。

 

黒田が小学校の公民の勉強からやり直すというのは、今の政治家がどれだけ基本を忘れているかという皮肉になっていた。
それに、黒田が表面上は政治的な駆け引きをしている野党党首(吉田羊)と愛人関係にある、というのも、何か寓話のようでもあった。
妻(石田ゆり子)との関係のあたりは、あまりにも漫画的だったが、まあ、コメディだからね。

 

政治権力者を茶化した作品だが、堅苦しいことを考える必要はなかった。
いつの時代でも、虐げられた庶民は権力者を茶化して溜飲を下げるのである。
今の日本にも、こんな風に茶化される政治家が、・・・いる?
あ、あの人か!  そうか、この人もか!