2006年 日本 110分
監督:中村義洋
出演:濱田岳、 瑛太、 関めぐみ
純愛復讐劇サスペンス。 ★★★
吉田修一の小説はいくつも映画化されているが、それと並んで映画化されているのが伊坂幸太郎。
彼の映像化作品では、「フィッシュストーリー」と「重力ピエロ」が好きだった。
今作も同名小説の映画化。原作は読んでいたので、その要となるカラクリは知っていた。
しかし、あの叙述トリックをどうやって映像化した?
大学入学で仙台に引っ越してきた椎名(濱田岳)はボブ・ディランの「風に吹かれて」を口ずさんでいて、アパートの隣人の河崎(瑛太)に声をかけられる。
ボブ・ディランの声は神様の声だよな。ええ、そうですね。
ところで、一緒に書店を襲撃しないか。仲間ができるのを待っていたんだ。
こうして奇妙な出来事に巻き込まれていく椎名。
一緒にモデルガンを片手に書店強盗をして、河崎と親交を深めていく椎名。
盗んだ辞書はブータン人のドルジにプレゼントしてやるんだ。
彼の恋人の琴美は二年前に死んでしまったんだ。落ち込んでいるドルジを励ましてやりたいんだよ。
でも、どうして辞書なの? どうしてわざわざ書店から盗むの?
椎名の目線で描かれる現在の話と、河崎が語る二年前の物語が交互に展開される。
二年前、河崎の元カノだった琴美は留学生のドルジと恋人同士になる。
そして、ドルジと琴美は動物を虐待している悪い奴らに遭遇して・・・。
伊坂孝太郎原作・中村義洋監督のコンビ作では常連の濱田岳。
小柄でちょっとおどおどしていて人が好さそうで、そんな雰囲気がこの映画でも役柄によくマッチしていた。
そして瑛太。ある意味ではこの映画の本当の主役である。
冒頭からなんだか胡散臭い雰囲気を出しているのだが、その理由も明らかになってみれば、なるほど。
途中から顔を出してくるのが松田龍平。彼に関してはコメントせず(苦笑)。
いたるところに奇妙な謎が散らばっていて、その伏線の回収もうまい。
河崎が盗んだ辞書が「広辞苑」ではなくて「広辞林」だったり、なぜ椎名の部屋から本が盗まれたのか、だったり。
なるほど、そういうことだったのか。
それに、河崎が裏口からの逃走にこだわったのにも、ちゃんと悲しいわけがあったのだな。
事件が終わり、最後、神様に内緒にしてもらおうよ。とボブ・ディランを鳴らしているラジオをコインロッカーに入れる。
アヒルと鴨って、ドジルと河崎のこと?
とても不可思議に見えていた事柄がちゃんと収まって、終わってみればどこか切なさが残る作品。
小説もよかったけれど、映画も充分に魅力的でした。