あきりんの映画生活

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「ノスフェラトゥ」 (1978年) イザベル・アジャーニがドラキュラと戦うぞ

1978年 西ドイツ 107分 
監督:ヴェルナー・ヘルツォーク
出演:クラウス・キンスキー、 イザベル・アジャーニ、 ブルーノ・ガンツ

ドラキュラもの。 ★★★

 

ヴェルナー・ヘルツォーク監督といえば、「アギーレ/神の怒り」が有名で、関心はあった。
しかし、あの映画はあまりにも怖ろしそうだなということで敬遠していた。
と、なんとイザベル・アジャーニが出ている映画を撮っているではないか。
彼女が出ているのなら、その映画は観てみようかな。

 

なんでも1922年の映画で「吸血鬼ノスフェラトゥ」というのがあったらしい。
今作はそのリメイクとのこと。

 

物語の骨子はドラキュラ伯爵ものとしておよそなじんでいるものに近い。
この映画の魅力は、そのおどろおどろしい悪夢のような画面にある。それがヘルツォーク監督の魅力なのだろう。

 

無数の鼠と一緒に棺桶に入り帆船で黒海を渡るドラキュラ伯爵。
石畳の街にあふれる鼠、鼠、鼠。
鼠はペストをひろめ、街には屍体が散乱する。
避けられない死を受容した人々が最後の楽しみだといって豪華な晩餐を広場でとったりする。

このあたりの狂気が溢れている美しい場面、これなのだろうな。

 

悪の象徴のようなドラキュラ伯爵を演じているのが、“怪優”クラウス・キンスキー。
たしかに怪優という形容詞がダテではない。外連味たっぷりの怪演である。

 

そしてイザベル・アジャーニ
彼女を初めて観たのは「愛のはじまり」という2002年の映画だった。
狂気にとりつかれている、というか、自己の世界に没頭しているというか、そんな危ういものを孕んだ女性を演じていた。
きれいな女優さんだな、30才ぐらいかなと思って観ていたのだが、なんとこのとき47才だった!
それこそ(美)魔女であった!

 

この映画の時、彼女は24才ぐらい。
白塗りを強調したメイクで、大きく見開いた眼が敢然と悪に対峙する。
こちらもキンスキーに負けじとばかりの怪演で、しかも美しい。

 

ドラキュラ伯爵はアジャーニ演じる美しい人妻ルーシーに惹かれて、雪深い山奥の古城から街へやってきたのだ。
で、ドラキュラ伯爵がルーシーに迫る。

 

一方で、伯爵の正体を知ったルーシーは、我が身を犠牲にしてドラキュラを倒そうとする。
深夜、ドラキュラを誘惑したルーシーは何とかして朝日が射すまで彼を棺桶に帰すまいとする。
ルーシーの細いうなじに噛みつき血をすすろうとするドラキュラ伯爵。
妖しくも快楽がまとわりついている美の極地である。

 

正統派ドラキュラ映画として好いものだった。
さて、実はこの映画、名画座での2本立てで観た。次の1本はさらに度肝を抜くものだった・・・。