あきりんの映画生活

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「コブラ・ヴェルデ」 (1987年) 俺こそが緑の毒蛇だっ!

1987年 西ドイツ 113分 
監督:ヴェルナー・ヘルツォーク
出演:クラウス・キンスキー

波瀾万丈の無法男ドラマ。 ★★★★

 

主人公は、19世紀初頭のブラジルで"コブラ・ヴェルデ(緑色のコブラ)"と名乗っていた山賊のフランシスコ(クラウス・キンスキー)。
銃を手にした彼が姿を見せると、村の人々は我先にと逃げ隠れる。
そんな彼を見込んで、農場主は奴隷監督として雇う。頼りにしているぞ。

 

まあ、キンスキーが放っているやばさのオーラは並ではない。
こんな人物に近づいたらどんな目に遭うか、怖ろしや怖ろしや、という雰囲気なのだ。
(ポスター写真を見て欲しい。ね、近づきたくないでしょ。)

 

フランシスコは農場主の3人の娘に手を出してしまう。
おのれ、儂の可愛い娘を皆もてあそぶとは・・・、許さんぞ、罰としてお前は奴隷商人としてアフリカへ行けっ。
ふん、あの野蛮な王タカパリのところへ行って生きて帰った者はおらんのだ。

 

そこから映画は、アフリカの黒人社会でひとり生き抜いていくフランシスコの物語となる。
海辺に建つ粗野な砦。黒人同士で虐げ、虐げられる原始的な社会。
命があっさりと切り捨てられるようなそんな世界で、ただ一人の白人としてのし上がっていくフランシスコ。

 

黒人奴隷を調達して、黒人の王タカパリのところからブラジルへ送る彼は、やがて王に捕らえられ殺されそうにもなる。
すると現国王に対して反乱を企てるお目々くわっの王子がいたりして、処刑寸前でフランシスコは助けられたりする。
そして(おっぱいぶるんぶるんの)アマゾネス軍団を鍛えて反乱戦に勝利したりする。

 

とにかくやりたい放題のこの映画の感じは、そう、アレハンドロ・ホドロフスキー監督を思い出させた。「エル・トポ」とか、ね。
あのはちゃめちゃな物語展開なのだ。図太い強さがあるなあ。

 

この頃のキンスキーは手に負えなかったと、ヘルツォークが何かで語っていたとのこと。
常人ではないヘルツォークがそう言うほどだから、よっぽど凄かったのだろうな、キンスキーは。

 

映画では、黒人蔑視はあるわ、女性の人格無視はあるわ、障害者差別はあるわで、そのあたりには不快感もある。
しかし監督は、そんなことはまったく意に介していないようなのだ。
そうなのだ、ヘルツォークの映画を観て心地よくなろうなんて、はじめから思ってはいけないわけだ。

 

ラスト近く、黒人少女たちが楽しそうに合唱する姿が映る。
屈託のない少女達の笑顔がはじけ(特に中央でソロをとる少女の圧倒的な笑顔はどうだ)、ここは素晴らしく高揚する場面。
これが奴隷解放の彼女たちの喜びをあらわしているととるのはいささか皮相的すぎるか。

 

ラスト、おのれの運命に負けたことを知りつつ、絶望的に荒海に船を押し出そうとするキンスキー。
その姿は狂気の果ての虚無感のようで、印象的だった。

 

さすがにヘルツォーク映画の二本立ては、疲れた・・・。
彼の映画はもう1年間ぐらいは観なくていいぞ(苦笑)。