あきりんの映画生活

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「碁盤斬り」 (2024年)もし小判が出てきたら、そのときにはその方らの首をもらい受けるぞ 

2024年 129分 日本 
監督:白石和彌
出演:草彅剛、 清原果耶、 國村隼

人情時代劇、 ★★☆

 

私は自分で打つことはないのだが囲碁を見るのは好きである。
NHK囲碁番組は毎週見ている。したがってルールも一通りは知っている。
主役も元SMAPの中では一番好きだった草彅くんだし、それじゃ観てみようかと。

 

無実の罪を着せられて彦根藩を追われた柳田格之進(草薙剛)。
彼は、娘のお絹(清原果那)と江戸の裏長屋で貧しい生活をしていた。
実直な格之進は打つ囲碁にもその人柄が表れ、誠実な勝負を信条としていた。

 

そんな格之進が碁会所で知り合うのが高利貸しの源兵衛(國村隼)。
彼はあくどい仕事で金儲けをし、賭碁でも汚く金を巻き上げているような人物だった。
ところが格之進の打つ碁の清々しさに心を打たれて、それから徐々に正直者に変わっていく。
その様は源兵衛の表情だけで十分感じられた。さすがに國村隼は上手い。

 

原案は古典落語の「柳田格之進」らしい。
清廉潔白な浪人が50両盗みの濡れ衣を着せられ、その大金返済のために娘が吉原に身売りをする・・・という人情話である。
そこに、掛け軸紛失の罪をきせられ藩を追われた武士の復讐物語をかぶせたようだ。

 

碁の監修は高尾紳路九段だった。
随所随所で映る碁の盤面は、やはり今風のものではないなあと思えた。
江戸時代の有名な打ち手には本因坊道策や安井算哲などがいるわけだが、そのあたりの棋譜を参考にしたのではないだろうか。

 

映画の中の布石では三連星が打たれていた。
今はAIの普及により初手の星打ちも珍しくなくなったが、江戸時代の碁では初手小目が多かったのではないだろうか。
碁のルールを知らなくてもこの映画鑑賞には支障はなかった。しかし少しでも知っていると、より楽しめることは確かだ。

 

草薙剛が無精ひげ伸び放題の浪人姿にもなり、熱演していた。
彼は本来はどこかのどかな雰囲気を持つ役者だと思っていたのだが、この映画では真摯に状況に向き合う厳しさを終始醸し出していた。

 

(ちょっと苦言)
命をかけた囲碁で、それも相当の腕の者が”石の下”に気付かないはずはないと思うのだが。冒頭で素人に教えているぐらいの手筋なのに・・・。
でも、それを言っちゃあ話しが成り立たないか・・・。

 

人情話と復讐物語の融合は違和感もなく上手くいっていたように思う。
50両紛失の一件の方の結末はどうなるのかと思っていたが、まあ、これは映画タイトルでバラしてしまっているようなものだからね(苦笑)。

 

(余談)
エンドクレジットで出演者の中に、囲碁の世界では超有名な井山裕太王座、それに超人気の藤沢里菜女流本因坊の名があった。
囲碁監修の高尾九段がエキストラで出てみないと二人を誘ったところ、快諾だったとのこと。
しかし、どこに出ていた? 碁会所で碁を打っている人たちの中にいた? 
出ていると知っていればもっと注意して観たのに。