2021年 115分 日本
監督:清水崇
出演:綾野剛、 成田凌、 岸井ゆきの
深層心理SF。 ★★★
原作は400万部売れたとされる同名のコミック(未読)。
なぜか記憶喪失となっている名越(綾野剛)は、ホームレスの生活を送っていた。
ただし、なぜか銀行に預金はたくさんあってお金には困っていない。変なの。
そんな名越のもとに医学生だという伊藤(成田凌)が接触してくる。
1週間で70万円のアルバイトをしませんか。頭蓋骨に小さな穴を開けて、その後の様子を観察させてください。
なんだ、それ?
なんでも、そのトレパネーション手術によって脳圧が変化し、脳の働きが活発になるのだという。本当か?
電気ドリルで頭蓋骨に穴を開ける手術をするのだが、あれ、どうみても消毒不十分で不潔っぽい。すぐに脳髄膜炎を起こしてしまいそう。
それに、ドリルの尖端が狂って少しでも深く入ってしまったら脳実質が傷ついてしまうぞ。
そんなことになったら大変だが、まあ、そのあたりはコミック原作の映画だからね。
さて。頭蓋骨に穴を開けた名越が左目で人を見ると、異形のものが見えるようになったのだ。
なんだ、これは? 気味悪いなあ。
伊藤はこの異形のものをホムンクルスと呼んでおり、人が抱える深層心理が形となったものだと言う。
人間の本質は人格形成が行われる幼少期のトラウマにあり、ホムンクルスはそれが視覚化して見えるのだという発想が斬新で面白い。
名越はその能力を用い、心の闇を抱える人たちと交流していく。
強面のヤクザの親分は幼いころに弟の指を切断させてしまったちうトラウマを抱えており、風俗店の女子高生は処女であることが負担になっていたりした。
彼らのホムンクルスは超合金ロボットであったり、砂人間であったりした。
名越役の綾野剛が上手い。
いつも何か不機嫌そうで、それでいて物事に真剣に向きあおうとしている。
絵空事の物語なのだが、彼の張りつめた演技で見続けることが出来た。
後半に登場してくるのが名越の過去の秘密に絡んでくる一人の女性(岸井ゆきの)。
これがかなり縺れていて、観ていて、なるほど、そうだったのか、あれ、そうだったのか、と振り回される。
このあたりはなかなか楽しめた。
ホムンクルスの映像はいささか薄っぺらい感じもしたが、独創性はあった。
それにしても、あんなのが普段から見えてたら嫌だな。
映画としては現実世界と異世界、人間のうわべの建前と深層心理、が混在した世界を映像化しようとしており、なかなかに意欲的であった。
自分の中の深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを観ている!
これは深いものを含んでいる言葉だと思えた。