2024年 113分 フランス
監督:黒沢清
出演:柴咲コウ、 ダミアン・ボナール
復讐サスペンス。 ★★★
さて黒沢清監督の新作。
本作はかつて撮った同名作品のセルフリメイクで、前作の出演は哀川翔、香川照之だったとのこと(未見)。
今回は舞台をフランスに移して、主人公も女性になっている。
謎の組織に8歳の娘を殺された父親アルベール(ダミアン・ボナール)は激しい怒りで復讐を誓っている。
病院で知り合った精神科医の小夜子(柴咲コウ)の助けを借りて、手がかりを探っている。
その組織はどうやらある財団のようだぞ。よし、その財団の関係者を捕まえて内情を聞き出そう。
捉えた財団関係者を廃工場に連れ込み、わずかに自由を残した手足を鎖で壁に固定してしまう。
食事も排泄も自由にはさせず、人としての尊厳を踏みにじろうとする。
肉体的にも辛いが、精神的にも耐えがたいような状況にして犯人を追い詰めていく。
これはかなりのものだね(気分的に無理な人もいるかもしれないレベルだな)。
柴咲コウの映画は久しぶりに観た。
かつての若々しさから、臈長けた美しさになってきていた。雰囲気のある女優さんになってきた。
フランス舞台なので彼女もフランス語で会話をしている。
私はフランス語はまったくわからないのだが、巧みに聞こえる。たいしたものである。
二人は、謎の財団の関係者を一人、また一人と拉致してきては、同じように廃工場に拘束する。
そしてアルベールの娘が死体で発見されたときのニュース映像を延々と見せ続ける。
そしてさらなる自白を迫る。もう、止めてくれ・・・。
幼い娘が殺された目的は、もしかして・・・
暗い情念の復讐ものなので、映画全体の雰囲気もぎすぎすとしている。
ポスターには小夜子とアルベールが大きな寝袋を引きずっている写真が載っている。
映画を観ればこの袋には拉致された男が押し込められていることがわかる。この寝袋が丸々とした大蛇の様にも見えてくる。
そして袋が引きずられた跡が蛇の道なのだ。禍々しい。
ずっと気になっていたのは、なぜ小夜子はこんなにも(自分の手を汚してまで)アルベールの復讐に協力しているのだろうか、ということだった。
物語が終盤にさしかかってその謎も明らかになってくる。
ああ、そうだったのか。小夜子の狙いはそうだったのか・・・。
すべてが終わっていっても、(黒沢清監督だから)決して心が晴れるような映画ではありません。
それは納得の上で鑑賞しましょう。