1994年 イタリア 107分
監督:マイケル・ラドフォード
出演:マッシモ・トロイージ、 フィリップ・ノワレ
素朴な村人と、世界的な大詩人との交流。 ★★★☆
地中海の小さな島へ、世界的な大詩人のパブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)が亡命してくる。
この映画は、ネルーダと、彼の元へ郵便物を届ける島の配達人の交流の物語(ポスティーノはイタリア語で郵便配達人の意)。
パブロ・ネルーダはチリの詩人で、共産党議員でもあった。
時の政権が共産党を非合法化したために、イタリアへ亡命してきたわけだ。
彼はすでに世界的な有名人で、村人たちも興味津々。
そんな彼の元へ届く郵便物を届ける仕事をマリオ(マッシモ・トロイージ)が引きうけることになる。
でも、マリオはネルーダがどんな人か、なんて知らない。偉い人だと聞かされていただけ。
詩人て、何をするんだ?
青い海、乾いた土、緑の木々・・・。村の風景が美しい。
そこに暮らす村人たちの気持ちも美しい。
マリオは、ネルーダに詩を書くことを教わる。隠喩、なんて言葉も知る(ネルーダは隠喩の名人として知られている)。
恰幅のいいネルーダは気むずかしい面をみせながらも、マリオに心を許して付き合いをつづけていく。
マリオが食堂の女主人の姪、ベアトリーチェに一目惚れをすると、ネルーダはわざわざ村へ出かけていってマリオの片思いの手助けをしたりもする。
フィリップ・ノワレの鷹揚な笑顔が好い味わいであった。
時代は変わる。
チリの国内情勢も変わり、やがてネルーダは村を去っていく。
そしてノーベル賞を受賞したりしたことを、世界の片隅でマリオたちは新聞で知る。
島のことを思い出してもらおうと、マリオは島の音を録音したテープを作る。
島の海岸に打ち寄せる波の音、岬を吹き抜ける風の音・・・。
この場面はしみじみとしていた。
あの満ちたりた日々をおくったこの島のことを、ネルーダはもう忘れてしまったのだろうか。
主演のマッシモ・トロイージはこの映画の作成時には心臓病に犯されていたとのこと。
彼はロケの最中に倒れ、撮影の終了直後に亡くなったとのこと。
素朴で無学な(しかし字が読めたので郵便配達人になれた)役柄を好演していた。
(以下、結末に触れます)
世界の動きから取り残されたような地中海の小島での日々が描かれています。
それだけに、島を再訪したネルーダがマリオの家族と再会する場面には、言いようのない情感がありました。