あきりんの映画生活

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「蜜のあわれ」 (2016年)

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2016年 日本 105分
監督:石井岳龍
出演:二階堂ふみ、 大杉漣、 真木よう子

幻想文学の映画化。 ★★

室尾犀星の晩年の同名小説の映画化。
老作家(大杉漣)と一緒に暮らす赤い服の少女、赤子(二階堂ふみ)は、実は金魚だった。
老作家の思慕をからかうように赤子は奔放にふるまう。

二階堂ふみのコケティッシュな魅力で、この幻想的な世界を彩ろうとしている狙いはよく判る。
しかし、どうにも入りこめなかった。
赤子の、金魚の尾びれをひらひらさせる動きを取り入れたようなダンスとか、どこか無理をして作っている感じが随所にあった。

二人の前に、真っ白な着物の女性(真木よう子)も現われる。
彼女は老作家への想いのためにこの世を彷徨う幽霊だった。
老作家と金魚と幽霊。この組み合わせは、さすがに犀星、と感心してしまうのだが、映画ではその妖しさが表現し切れていなかった。
う~ん、幻想文学であるからには、もうちょっと突きぬけて欲しかったなあ。

物語を解釈しようとすると、そのあたりは結構面白い。
赤子に冷たくされた老作家は、金魚が赤子になって存在し始めているのは自分が小説に書いたからだ、とわめく。
すると、赤子は老作家の妄想の産物?
しかし、その自分が作りだした存在の赤子に老作家は翻弄されて悩んでいる。

作品が作者の手を離れて勝手に動き出しているようなのだ。
このあたりの不条理感も、もうすこし突っ込んでいれば、面白い内容になったような気もするのだが・・・。

二階堂ふみ真木よう子、と、私の好きな女優二人が揃っていたのに、もったいない出来だった。
鈴木清順の大正浪漫3部作のようなものを期待していたのだったが、それは無理だったか。残念。