あきりんの映画生活

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「ある日、どこかで」 (1980年) 帰ってきて・・・

1980年 アメリ
監督:ジュノー・シーウォーク
出演:クリストファー・リーブ、 ジェーン・シーモア

時を超えた恋物語。 ★★★☆

 

切ない恋物語ということで評価の高いこの作品。
原作は、スピルバーグを一躍有名にした「激突!」も書いているSF怪奇作家R・マシスン。
しかし本作は抒情的な幻想譚となっている。

 

駆け出しの劇作家リチャード(クリストファー・リーブ)のもとへ一人の老婦人があらわれる。
そして、「帰ってきて」という謎めいた言葉と共に、きれいな懐中時計を手渡して去って行く。
はて、あの老婦人は?

 

その8年後、リチャードはあるホテルで、古い一枚の若い女性の写真に心を奪われる。
そこに写っていたエリーズ(ジェーン・シーモア)は、あの老婦人の60年あまりも前の若き日の姿だった。
なんとかしてエリ-ズに会いたい・・・。
リチャードはついに時間の壁を越えて60年前のエリーズに逢いに出かける。

 

時を越えた恋物語というのは時折みかけるジャンルである。
個人的に好きなのは、レイチェル・マクアダムスの魅力を100%発揮していた「君が僕を見つけた日」だった。

 

しかし、本作で思い浮かべたのは1947年に作られた「ジェニーの肖像」。
20年前に亡くなっているジェニファー・ジョーンズを助けようと、ジョゼフ・コットンが過去へ向かう物語だった。
タイムトラベルをからめた恋物語の元祖に近いのではないだろうか。とても好くできていた。

 

さて。この映画のタイムトラベルの仕掛けはとても情緒的である。
強く念じることによって時を跳んでしまうのだ。
これについてはちょっと手抜き感があるが、まあ、それは映画の本質ではないのでいいことにしてしまおう。

 

過去に戻ったリチャードは、湖畔でエリ-ズと出会う。
リチャードを見た彼女が言う、「あなたなの」・・・。
この台詞は、エリーズがすでにリチャードのことを知っていて待っていてくれたように思えてしまうが、そうではなかった。彼女がリチャードに会うのは初めてだったのである。
おずおずと二人が気持ちを通わせていく様はほほえましい。

 

エリ-ズ役のジェーン・シーモアが美しい(ポスターの、湖畔で彼と並んでいる彼女を見て欲しい)。
こんな女優さんがいたんだと思ってしまう。
調べてみたら、なんと「007死ぬのは奴らだ」のボンド・ガールだった。へえ、知らなかったなあ。

 

時を超えて結ばれた二人だが、あっけないことで破綻を迎える。
そんなあ・・・。

 

素朴な感想を・・・。
エリーズはたった数日を共に過ごしたリチャードを愛してしまい、それからの生涯を死ぬまでその記憶だけで過ごしたことになる。
悲しすぎる。彼女の生涯はなんだったのだ、と思えてくる。

 

そもそも、エリ-ズの写真に魅せられたリチャードが過去へ行かなければ、二人は出会わなかったはず。
過去へやって来たリチャードと出会わなければ、彼女もそんな悲しい生涯は送らずにすんだのだ。

 

しかし、エリ-ズのあの写真は、リチャードを見て幸せそうに微笑んだ瞬間のもの。
するとリチャードが過去へ戻らなければあの写真は撮れなかったことになる・・・。あれ?
さらに、あのエリーズが大事にしていた懐中時計は、過去に戻ったリチャードからもらったもの。
リチャードが過去に戻るときに持っていたその懐中時計は、8年前にエリーズから渡されたもの。
あれ、あの懐中時計はどこからあらわれた?

 

過去と現在が入り混じる物語は、ときにややこしい。
このややこしさが、また好いんだよなあ。

 

物語が終わった後で振り返ると、冒頭の老婦人の「帰ってきて」の言葉が、本当に切ない。
タイムトラベル+切ない恋物語。秀作でしょう。