1995年 アメリカ 94分
監督:ダイアン・キートン
出演:ジョン・タートゥーロ、 アンディ・マクダウェル
母の死に直面する少年のものがたり。 ★★☆
スティーブンは、少し変わった発明家の父(ジョン・タートゥーロ)と、優しい母(アンディ・マクダウェル)と、妹の4人暮らし。
彼は家族の様子を手持ちカメラで記録したりしていた。幸せな日々の記録だった。
この映画はスティーブンの視点で描かれている。
だから、父や母など、大人たちが何を考えていたのか、どんな思いでいたのか、は説明はされない。
あくまでも少年の目に映った大人たちの行動として描かれている。
それが純真な物語のとらえ方となっていて、母の死に直面した少年を単なるお涙頂戴物として描いているのではないことにつながっている。
何故か元気のなくなってきた母が、実は癌で死んでいくのだと知ってしまったスティーブン。
どうしていいのか、判らない彼は家を出てしまい、親戚じゅうから疎まれている変人伯父兄弟の家にころがりこむ。
探しに来た父母に、彼は「お母さんが良くなるまで伯父さんの家にいるよ」と言う。
母は死を待つのみで、もう良くなることはないことを知った上での、この言葉が切ない。
原題は「調子の狂ったヒーローたち」。おそらくはこの変人伯父兄弟をさしているのだろう。
そうなのだ、この変人二人は飾らない、真面目に奇妙。
でもその二人がスティーブンの気持ちを立ち直らせていくのだ。
スティーブンがベッドに横たわる母に訊ねます、ママは死んじゃうの?
母は静かに答えます、そうよ、ママはもうじきいなくなるの。
こんな質問をする子どもも辛いし、それを質問をされる母も辛い。
しかし、二人とも避けようのないその事実を真正面から受け止めようとしている。
映画の最後、スティーブンと父は、かって映していたビデオカメラの映像をいっしょに観る。
母の笑顔が映っている映像を、いっしょに観ている。
繊細な少年の心情に寄り添った物語です。
時にコミカルで、哀しい物語を淡々と撮っています。