あきりんの映画生活

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「ウィ、シェフ!」 (2022年) 厨房ではシェフが絶対なのよ

2022年 97分 フランス 
監督:ルイ=ジュリアン・プティ
出演:オドレイ・ラミー、 フランソワ・クリュゼ

料理人ドラマ。 ★★☆

 

料理人や厨房を舞台にした映画は好みである。
食が人間の根源的な欲望に結びついているせいか、登場人物が生き生きと描かれていることが多い。
幸せのレシピ」「シェフ 三つ星フードトラック始めました」などはほのぼの系だったし、「ディナーラッシュ」などは普段はうかがい知れないレストランの裏側ものだった。

 

この映画のヒロインは腕はいいのだが人間関係が下手な女性シェフのカティ(オドレイ・ラミー)。
一流レストランのスーシェフ(副料理長のようなものらしい)だったカティは、シェフと味付けのことで大喧嘩をして辞めてしまう。
さあ、これからどうしようか。でも私の腕なら働き口に困るはずはないわ。

 

このヒロインは確かに腕はよくて、それゆえのプライドも高い。
自分の料理には妥協しないし、他人に文句も言わせない。
料理を食べた人は高評価をするのだけれども、人間関係を築くのがとてもへた。だから人生損ばかりしているような人。

 

さて。カティがやっと見つけた職場は、あれ?こんな職場? それにこんな厨房?
そこは大勢の移民少年たちが暮らす支援施設だったのだ。

 

移民大国のフランスにはこういう施設があるのだね。
成人になるまでにちゃんと修学できないと強制送還をされてしまうようなのだ。
少年たちも不安な毎日を送ってる。少年たちの行く末を心底心配している施設長のロレンゾ(フランソワ・クリュゼ)も一生懸命がんばっている。

 

しかし案内された厨房は荒れた感じの場所。
ロレンゾも言う、若者たちの食事なんて時間通りにおなかがいっぱいになればいいのさ。
冷蔵庫の中はレトルト食品の缶詰ばかり。
なによ、これ! 私がちゃんとした食事を作ってあげるわ!

 

当然のことながら少年たちはさまざまな事情を抱えている。
そんな彼らがおずおずとカティの料理作りを手伝うようになる。料理の面白さにみんな夢中になっていく。
カティの作る料理が美味しかったことはもちろん魅力だったのだろうが、その人柄も彼らに受け容れられたのだろう。
実はカティ自身も天涯孤独で施設で育った過去があったのだ。

 

料理を教えながらカティが少年たちに言う、厨房で返事をするときは、ウィ、シェフ!よ。

 

気になったのは食費も随分と限られていたのではないだろうかということ。
おそらく公共施設か、あるいはボランティア施設であるだろうし、運営資金がそれほど潤沢とは思えない。
材料費などどうしていたのだろうな。

 

まあ、それはさておき。
クライマックスは、TVの料理番組「クック」へのカティの出演。
応募した料理人たちが技を競って勝ち抜いていくという、日本でも時に観る料理番組の形式。
勝戦に残ったカティはTV番組の影響力に目を付け、移民少年たちの実情を訴え、彼らのための料理学校開設を訴える。

 

実際にモデルになった人がいたようだ。
その後、見事に料理学校を開設して少年たちに修学の実績を作って強制送還から救い、生きていくためのスキルも身につけさせた。

 

立派な事をなしたわけだが、人付き合いの苦手だった彼女もまた子ども達のおかげで生きる意味を見つけた面もあるのだろうな。
やはり美味しい料理は人を幸せにするのだよ。ウィ、シェフ!