2013年 アメリカ 134分
監督:ポール・グリーングラス
出演:トム・ハンクス
実録サスペンス。 ★★★☆
2009年。ソマリア沖でアメリカのコンテナ船が海賊に襲撃される。
銃で武装した4人がコンテナ船に乗り込んできて、船は完全に乗っ取られてしまう。
乗組員はどうなる? 船長はどんな行動を取った?
そんな事件に巻き込まれた実在のある人物に焦点を当てての人間ドラマ。
この描き方は、そうだ、クリント・イーストウッド監督作のようだ。
グリーングラス監督もこういう撮り方をしても上手いんだなあ。
始めの方で、ソマリアの海賊の生活が映し出される。
彼らを単なる海賊というものにせずに、彼らも生活に追われている人間なのだと言うことを描いていて、物語に深みが増していた。
海賊は海賊で、生きるのに必死なのだ。
海賊は小さな船でコンテナ船を追ってくる。
武装もしていないコンテナ船が迫ってきた海賊にどんな対処をするのかと思っていたら、船の周り中への放水だった。
小船を近付けさせないようにするわけか。なるほどなあ。
しかし海賊の方も大型船に乗り込む術はちゃんと準備しているわけだ。なるほどなあ。
このあたり、両者のリアルな攻防が必死で見応えがあった。
しかし、ついに海賊4人がコンテナ船に乗り込んでくる。
船長のフィリップ(トム・ハンクス)は、あらかじめ数人のクルーを残して乗組員を機関室に隠れるように指示していた。
海賊たちはフィリップに銃を突きつけ、金を要求する。
金庫にあるだけの金をやるから、それを取ってここから立ち去ってくれ。
冗談じゃない、こんなはした金で満足できるか。会社から大金を届けさせろ。お前たちが人質だ。
命の危険にさらされながら、海賊と必死に交渉するフィリップ。
演じているのがトム・ハンクスなので安定感はいうことなし。
そういえば、イーストウッド監督の「ハドソン川の奇跡」を思い浮かべてしまった。
あちらも全責任を負う貴重の役だったな。
物語はこのあと、単身で人質となったフィリップの救出作戦となる。
フィリップは海賊たちと共に小さな救命艇に乗っているのだが、それをアメリカ海軍のネイビー・シールズが取り囲むのだ。
アメリカとしては、フィリップが殺されてしまうようなことはなんとしても避けなければならない。
一方の海賊としては、フィリップを盾にして交渉しているわけだが、もし本当にフィリップを殺してしまえば自分たちの命がないこともよく判っている。
どちらがどのように、自分側に有利な譲歩を引き出せるか。
そもそも感情的にもなっている海賊たちに、説得の理屈がとおるのか?
フィリップのいつ殺されるか判らない不安、アメリカ軍の絶対に失敗が許されない実行指令、海賊たちの半ば捨て鉢な焦り・・・。
最後まで見応えのある緊張感が続いた。
あんな経験をしたら二度と船になんか乗りたくないと思ってしまいそう。
しかし、実在のフィリップは、その後も船長を続けたとのこと。
すごいな。