あきりんの映画生活

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「ハドソン川の奇跡」 (2016年)

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2016年 アメリカ 96分
監督:クリント・イーストウッド
出演:トム・ハンクス、 アーロン・エッカート

実話に基づく人間ドラマ。 ★★★★

この映画が、2009年に実際にニューヨークで起こった旅客機事故をもとにしていることは、観る者はみんな知っているだろう。
機長のとっさの判断で真冬のハドソン川に不時着し、奇跡的に登場者155人全員が生還した事件である。

映画はいきなり事故の起こった数日後から始まる。
事故機の機長だったサリー(トム・ハンクス、機長のこの愛称が映画の原題でもある)は、TVニュースで時の人となっている。
無事に生還した乗客たちからは感謝の言葉が寄せられている。
それなのに、国家運輸安全委員会(NTSB)ではどうもサリー機長の判断を疑問視する意見も出てくる。

おいおい、私は全員の命を救ったんだよ。
それのどこがいけなかったんだい?
突発事故が起きたあのときに、ほかにどんなことが出来たというんだい?

国家運輸安全委員会は、ハドソン川に着水するような危険を冒さずに、近くの飛行場へ引き返せたのではないか、さらに、片翼のエンジンはまだ動いていたのではないか、と追求してくる。
コンピューターのシュミレーション結果は、サリー機長、あなたの判断に疑問を呈していますよ。
やはり、ここには保険会社の思惑なども絡んできていたのではないだろうか。

サリー役のトム・ハンクスは白髪で、白い鼻髭を生やした風貌。
映画の最後に、実際のサリー機長の姿が映る。ああ、そうか、これに似せたのか。

映画は、そこから事故当時の映像に戻っていく。
自分の判断が責められて懊悩するサリー機長が、もう一度事故の様子を振りかえっている、といった案配なのだ。
飛び立ったばかりの飛行機のエンジンに鳥がぶつかり、両方のエンジンは停止して・・・。

そう、この映画は単純に”ハドソン川の奇跡”を描いた実録ものではない。
とっさの判断で、無謀とも言える決断をして、(幸いにも)乗客全員の命を助けることができたサリー機長の、自分の判断に対する、そしてその判断に対して向けられた審議に対する、懊悩を描いている。
イーストウッド監督は、単に事件を描いたのではなく、そこにいた人間を描いている。
だから原題も、事故のことではなく、”サリー”という機長その人になっているわけだ。

事故の回想が終わり、やがて、最終検証の公聴会の日となる。
コンピューターの分析解釈は?
そしてそれにしたがってシュミレーションをおこなった検証の結果は?

副操縦士役のアーロン・エッカートも好かった。
時の人として騒がれているサリー機長に嫉妬することもない。
検証で責められ、苦境に立つ彼を終始支持してくれる。本当に好い人だった。

この映画は、一大事故というモチーフを扱いながら、物語の焦点を絞り、96分という短めの尺に収められている。
緩むところがなく、無駄がひとつもない。

(以下、ネタバレ)

コンピューターの出した検証結果に、人間性を加味して検証することを主張するサリー。
そしてその結果は・・・。

最終的な検証の結果を確認して、彼を追求してきた委員会のメンバーがサリー機長の功績をたたえる。
観ている人は、みな、ああ、好かったね、というカタルシスを感じることができる。

さすがにイーストウッド監督だと、改めて感心した。