1953年 イタリア 103分
(オムニバス)
実験的な内容のオムニバス。 ★★☆
戦後すぐのイタリアでは”ネオリアリズモ”という芸術運動があったらしい。
映画と文学がその運動の中心だったらしい。
その精神で作られた6編からなるオムニバス映画。
この映画のプロデューサーの言葉は次のようなもの。
「我々が求めていたのは身近にある現実のみ、かつて無い映画表現を徹底的に追及したのだ」
ということで、ドキュメンタリーあり、独白ものあり、と、物語性を排したところで作られている。
ミケランジェロ・アントニオーニとフェデリコ・フェリーニという二大巨匠の未公開作品が入っているということでも有名。
1.「支払われた愛」監督カルロ・リッツァーニ
実際の娼婦へのインタビューから成り立っている。
なぜ、彼女らは街の夜に立つのか、という生の声が聞こえてくる。
2.「自殺の試み」監督ミケンランジェロ・アントニオーニ。
こちらは実際に自殺を試みた女性へのインタビュー。
生々しい感情の吐露があるのだが、カメラは冷ややかにそれを記録している。
3.「三時間のパラダイス」監督ディーノ・リージ。
50年代の男女の社交場はダンスホールだったようだ。
音楽に合わせて踊りまくる男女がいて、その喧噪のなかでの恋の駆け引きが繰り広げられる。
4.「結婚紹介所」監督フェデリコ・フェリーニ
ローマの結婚紹介所を訪れて、その実体を探ってみた、という内容。
これは完全なフィクションもので、フェリーニらしい皮肉さも入っている。傍目にはちょっと滑稽に見えてしまうところは、結婚相談所が持っている宿命か。
5.「実録カテリーナ物語」監督フランチェスコ・マセッリ。
男に捨てられ、貧窮している若い母親を描いたシリアスな実話もの。
6.「イタリア人は振り返る」監督アルベルトラットゥアーダ
最後は、街のきれいな女性を盗み撮りっぽくして集めたもの。
そこに効果音をつけて、女性を振り返って観てしまう男たちをとらえる。
まあ、たわいもないと言ってしまえばそれまでだが、実は一番楽しめた(苦笑)。