2009年 アメリカ 118分
監督:ロブ・マーシャル
出演:ダニエル・デイ=ルイス、 マリオン・コティヤール、 ペネロペ・クルス
ケイト・ハドソン、 ニコール・キッドマン、 ジュディ・デンチ
ソフィア・ローレン、 ファーギー
F・フェリーニ監督の「8 1/2」を基にしたミュージカル。 ★★★★
「8 1/2」は私の評価では不動の5つ星の映画。
それををミュージカルにするなんて、一体どんな映画になったのだろうと、期待半分、不安半分で観に行く。
出演者は宣伝文句通りにすごい。
主な出演者は、ケイト・ハドソンをのぞけばアカデミー受賞者ばかり。
ストーリーとしては、新作映画の撮影にはいった監督のグイドの内面の思いを映像で描いたもの。
脚本を書くこともできないスランプに陥ったグイドの周りを、なぜか魅力的な女性ばかりが取り囲む。
しかし、もともとがオリジナルの「8 1/2」にはストーリーらしいものはない。
現実とも妄想とも判断できないような、フェリーニの頭の中に去来したイメージをつづった作品。絵画で言えば具象画ではなく、抽象画である。
ただ、今回の「NINE」は、オリジナルの精神の奥へ沈み込んでいくような混沌とした部分はかなりきれいに削り取っている。
代わりに圧倒的な歌と踊りを挟み込んでいる。
絵画で言えば、きれいなパーツを巧みに組み合わせたコラージュ作品である。
だから、やはりストーリーらしいものはほとんどないに等しいのだが、このコラージュの具合がとても上手く噛み合っており、全くダレルことはない。
ミュージカルはどちらかと言えば私は苦手である。ニコール・キッドマンが出ていた「ムーラン・ルージュ」は全く受け付けなかった。
しかし、今回の歌と踊りには魅せられた。全部本人が歌っているのだとしたらすごいものだ。
特にケイト・ハドソンの「シネマ・イタリアーノ」はノリがよく、それでいてかってのフェリーニ映画の雰囲気も残していて、出色であった。
ご贔屓筋のペネロペ・クルスは愛人役。
大方の男性が理想として妄想する典型的な衣装で、歌って、踊ってくれる。う~ん、大胆!
グイドにとってのミューズとも言うべき役どころがニコール・キッドマン。
オリジナルではクラウディア・カルディナーレが演じていたが、心なしか、似ていると思わせる雰囲気を出していた。
オリジナルの「8 1/2」の最後の場面は、巨大な野外セットでこれまでの出演者が輪になって踊るというもので、これまで観た映画での印象残る場面のベスト3に入るものだった。
今回はどうなっているのだろうと思っていたのだが、・・・よかった!
屋内のセットの扉を開けて次々に姿をあらわす出演者たちを観ている間に、不覚にも涙が出てしまった。
大画面、大音響で観て良かったと思える作品だった。