あきりんの映画生活

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「王女トリュミス」 (2019年)

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2019年 カザフスタン 127分
監督:アカン・サタイフェイ
出演:アルミラ・ターシン

草原の戦い史劇。 ★★★

 

先日観たインド映画「マニカルニカ」は、植民地化しようとするイギリスと戦った強い女性の物語だった。
こちらは紀元前6世紀に、ペルシャの侵略と戦ったカザフスタンの強い女性の物語。
カザフスタンの映画は初めて観た。

 

中央アジアカザフスタンは、カスピ海に面した草原の国。
いろいろな部族が遊牧民として生活していたようだ。
遊牧民族というのは基本的に戦闘部族であるようだ。周囲の部族を侵略、略奪も普通におこなっている。
この辺は、何故かは判らないのだが、農耕民族との大きな違いなのだろう。
ヒロインのトリュミス(アルミラ・ターシン)は、そんな草原の部族マッサゲタイの長のひとり娘。幼い頃から武術を修練していた。

 

前半は、トミュリスの生い立ちから結婚まで。
父と家族を部下の裏切りで殺されたトミュリスは、放浪の末に義のある部族に助けられて成長する。
そしてついにマッサゲタイ族の長の遺児としての戦で仇を打ち破り、故郷へ凱旋するのだ。
相思相愛となった夫と共に部族を収めることになったトミュリス。

 

もうここまででも充分に波瀾万丈の一本の映画となっていた。
しかし、後半にもっと大きな山場があるのだよ。

 

ヒロインがちょっと柴崎コウを思わせる険のあるオリエント美女。
日本人受けするのではないだろうか。
そして彼女たちが馬を走らせる草原の風景が美しい。どこまでもうねって続いているのだ。

 

かたや戦闘場面は本格的なものだった。
CGがどのくらい使われているのかは判らないが、半端ではない人数での集団戦闘である。
火薬が発明される千年ぐらい前の話だから、武器は剣と短めの弓が主なもの。
戦いのほとんどが肉弾戦であり、迫力がある。

 

さあ後半。
夫との間にできた息子も立派な青年となり、幸せな暮らしだったのだが・・・。
この頃、世界での覇者と言えば大国ペルシャ
周りの国をことごとく支配下に治めたペルシアの初代国王キュロス2世が、いよいよ中央アジアに目をつけるよ。

 

もう世界の半分を征服したぞ、残すのはエジプトと中央アジアだけだ、と豪語する大帝国ペルシア。
トミュリスの夫と息子は言葉巧みな使者に騙されてペルシャの首都を表敬訪問する。
おいおい、危ないぞ、ペルシャは何か企んでいるぞ。

 

案の定、キュロス王は夫と息子を惨殺してしまう。
寡婦にしてしまえば女なんてどうにでもなる、と豪語するキュロス王。
トリュミスに、観念して服従しろ、わしの妾の一人になれ、悪いようにはしないぞ。
おのれ、そんな脅しに負けるものか、夫とわが子の仇を討ってみせるっ!

 

トミュリスは草原の各部族を一致団結させ、ペルシャと戦う準備をする。
ペルシャの迫害から逃れてきた職人たちから鉄の製造を学び、鉄製の武器や防具を作り戦に備える。
そしてついに圧倒的な兵力でペルシャ軍が攻め込んでくる。

 

ここでの草原での戦いも迫力がある。
いかんともしがたい兵力差があるトミュリスは、少数精鋭の軍団を編成する。
そして周囲からの援護の下に、その精鋭軍団で一気にキュロス王の本陣に攻め込む作戦を敢行する。
このときに、彼女が庇護してきた幼子が立派な戦士に成長しており、作戦を成功させる。

 

そんなに上手いこといくかな、とも思ってしまうところだが、史実なのだよ。
100年ぐらい後の歴史家ヘロドトスがちゃんと書いているのだよ。

 

カザフスタンの映画事情がどんなものかはよく知らないのですが、これはかなり好く出来た作品でした。
宝塚の男役を思わせるようなヒロインにも華がありました。
歴史アクションものが好きな人にはお勧めできる1本です。