あきりんの映画生活

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「SHADOW 影武者」 (2018年) 薄墨色の武侠アクション

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2018年 中国 116分
監督:チャン・イーモウ
出演:ダン・チャオ、 スン・リー

武侠アクションもの。 ★★★☆

 

チャン・イーモウ監督といえば、「HERO」そして「LOVERS」である。
華麗なワイア・アクションをめくるめくような色彩美で描いていた。
今作は同じように武侠アクションものだが、なんと墨絵のような単彩色の画面である。

 

舞台は戦国時代の小国、沛(ペイ)国。
まだ若者である王は隣接した炎国に領土の一部を差し出しての休戦同盟でなんとか平和を維持していた。
すると、こんな屈辱的な日々はもう我慢がならんっ!
領土奪還を目指す都督が王の命にそむいて炎国最強の戦士・楊蒼に対決を申し込んでしまう。
おいおい、どうするんだ。もし負けたら今よりももっと惨めな状態になるぞ。

 

この物語は三国志に登場人物を借りているとのこと。
そういえば、たしかに曹操に追われた劉備軍が沛国にやってくるところがあった。
なんでも主人公の都督のモデルは呉の提督・周愈で、妻の小艾は絶世の美女と謳われた小喬とのこと。
すると敵対した炎国の大長刀の武将・楊蒼は、あの関羽だったのか。

 

さて。実は都督は刀傷がもとで身体も自由にならない状態だったのだ。
そこで影武者の都督が戦いを挑んでいたのだった。
決戦に向け、本物の都督の指導の下で傘(!)を武器にした技を磨く影武者。

 

贔屓であるチャン・イーモウ監督の武侠もの。やはり画面は美しい。
アクションも華麗だし、前半の見せ場となる対決の舞台も水上に作られたりしていて工夫を凝らしている。
モノクロ画面なのだが、全体は薄墨で描かれたような味わいがあった。

 

この映画で目を引いたのは、武器として登場した何枚もの刃を仕込んだ傘。
戦術としては、剛として襲ってくる敵の長刀を、軟の傘で受け流す、といったものだった。
直線的な攻めに対して曲線の動きで対抗するというわけだ。

 

体術ともあいまってのアクションだったが、どこまでいっても傘なので、イメージとしてはいささかぬるいものがあった。
激動感が今ひとつ伝わりにくかった。残念。
(いっそうのこと、刃となっていた傘の骨を全部飛ばしたあとは長槍としての武器となる、その方が格好好かったのではないかい? でも、それでは剛と軟の対比が見せられないか)

 

チャン・イーモウ監督なので男女の恋物語も織り込まれている。
美しい都督の妻は献身的に夫に尽くしながらも、影武者にも心惹かれていくようなのだ。
今は隠れている存在の主と、表に現れている影と、彼女はどちらを選ぶのか?

 

やがて奪われた領地を奪回するために少数精鋭による炎国への侵攻が始まる。
敵の攻撃を避けるために雨の中を転がっていく兵士たち。
ここでもあの鋼の刃を飛ばす無数の傘が武器として使われていた。

 

そしてクライマックス。王と都督、そして影武者の三者の思惑、策謀がぶつかり合う。
最後に覇者となったのはだれだった?
そして、夫と影武者の間で心が揺れ動いていた都督の美しい妻はどうした?

 

イーモウ監督の独特の美意識が遺憾なく発揮された作品でした。