あきりんの映画生活

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「キープ・クール」 (1997年) チャン・イーモウの描くドタバタ劇

1997年 中国 95分
監督:チャン・イーモウ
出演:チアン・ウェン

粗野な男たちの感情がぶつかり合って・・・。 ★★★

 

「初恋の来た道」のチャン・イーモウである。「HERO」や「LOVERS」チャン・イーモウである。
その彼がこんな映画を撮っていたなんて!
なんとこの映画、コミカルな要素も入れたドタバタ劇である。

 

主人公は粗野な感じの露天商のシャオ(チアン・ウェン)。
彼女だったアンホンにフラれたのだが、未練たらたら。
ストーカーまがいにつけ回し、ついにはアンホンのアパートの前で大声で、お前が好きだと叫び続ける。
それも通行人にお金を渡して叫ばせる。なんていい加減な奴だ。

 

上品さ、華麗さなどはかなぐり捨てて、とにかく勢いのある映画である。
登場人物たちも、普通の常識からは外れたような事を平気でやる。
それも当の本人は大まじめに本気でやる。
がさつと言うか、はた迷惑というか。しかし、その勢いで見せられてしまう。

 

アンホンにしつこくつきまとったシャオは、とうとう彼女の今の恋人である劉とその仲間に袋だたきにされてしまう。
その争いの時に、シャオはたまたま側にいた通行人チャンの鞄を奪って応戦する。
そして、その鞄の中に入っていたチャンのパソコンを壊してしまう。

 

なんや、チンピラたちの女性をめぐってのいざこざか。
そのとばっちりを食らったチャンも気の毒だな。

 

ところがここから物語は大きく様変わりをする。
気の弱そうに見えたチャンだったが、大事なパソコンを壊されたことで怒り狂う。シャオに弁償しろと執拗に迫る。
シャオはシャオで、喧嘩を売ってきた劉に何とかして復讐したいと、怒り狂う。
パソコンの弁償なんかできるか、それは劉の責任だ、俺も被害者だ!

 

日本人からすると、普段から中国人の声は大きいと思える。
さらに感情が高ぶっている者同士がやり合うのから、大声が飛び交う、口調も荒く激しい。
ゴミゴミとした街中や店内で、剥き出しの感情をぶつけ合う。もうすさまじい言い争い。
(大陸の長い歴史は殺戮の歴史でもあった。とにかく大声で主張した者が勝って生き残れるのだ、という文化があるようだ。)

 

すったもんだのあげく、ついには劉の経営するレストランで3人で話し合おうということになる。
しかしシャオはこの機会に劉に仕返しをしようと刃物を隠し持っている。
それを察したチャンは、なんとかしてその殺傷沙汰を止めさせようと小細工を労する。

 

後半は、いざこざのきっかけとなったアンホンの事などどこへ行ったやら、という状態。
シャオとチェンの腹の探り合い、騙し合いが続く。
途中で、レストランにはカラオケ大好きおば様ご一同がやって来て、歌うわ踊り出すわの宴会を始めるのも楽しい。

 

いったい、この映画どうなるんだ? と呆気にとられる様な展開となっていく。
タイトルは、すぐに熱くなるシャオに、冷静になれよ、といっているのだろうか。
チャン・イーモウ監督の異色作でした。