あきりんの映画生活

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「影裏」 (2020年) 心の裏側には何がある?

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2020年 日本 134分
監督:大友啓史
出演:綾野剛、 松田龍平、 筒井真理子

友の心の闇。 ★★☆

 

原作は沼田真佑の文学界新人賞芥川賞受賞作。
まったく内容は知らぬままに、主演二人に惹かれて鑑賞した。

 

盛岡に転勤してきた今野(綾野剛)は、同い年だという同僚の日浅(松田龍平)と知り合う。
やがて部屋を尋ねてきた日浅と酒を飲み交わし、身ひとつで来いよと誘われるままに一緒に渓流釣りに行く仲になる。

 

屈託のない若者二人の交流の日々が描かれる。
主導しているのはいつも日浅で、今野はそんな彼に付いていく。
そのうちに今野は日浅に心を許す気持ちになっていく。

 

描写は丁寧で、盛岡の自然描写も美しい。
ちょっとおずおずとした雰囲気の今野と、何を考えているのかよく判らないような日浅。
それぞれの人物像を綾野と松田は上手くあらわしていた。
この二人、上手い。
脇を固めていた二人の同僚の筒井真理子が好いアクセントになっていた。

 

ところが日浅は何も言わぬまま、いきなり会社を辞めて姿を消してしまう。
日浅と音信不通となった今野は大事なものを失った感覚にとらわれてしまう。
彼は何故いなくなったのだ? 連絡もしないなんて彼は俺との仲をどんな風に考えていたんだ?

 

(以下、ネタバレ・・・か?)

はじめのうちから、何か綾野剛の様子が怪しいなと思ってはいた。
まさかそんなことではないだろうな、と訝しがってはいた。
すると、やはりというか、なんとというか、物語はボーイズ・ラブものだった。あちゃ、私は苦手なんだよな。

 

すると、綾野剛の演技はとても上手かったということになる。
具体的な動作や仕草が女っぽいとかというのではなくて、全体から発散する雰囲気なのである。
そういえば草薙剛が演じて評判になった映画もあった。
ポスターなどでは、あちらの草薙は女装していたようだったが・・・。

 

さて。
タイトルの影裏だが、これは二人で夜の渓流釣りに出かけた場面で出てくる。
焚き火の光に照らされた日浅が言う、「人間を見るときは裏側、影の一番濃いところを見るんだ」
後半になり、3.11東日本大震災が東北を襲い、日浅の生死は不明となる。
日浅の無事を確かめようとする今野は、次第に日浅の影の部分を知っていく。

 

ボーイズ・ラブであることを除いても、物語自体はいささか期待はずれだった。
もしかすれば、殺人事件でも起きるのではないか? あるいは日浅が抱えていた(学歴詐称などではなく)大きな秘密があるのではないか? と思いながら観ていた。
何も起きていなかった・・・。

 

事件が起きないからつまらない映画だということは、一概には言えない。淡々とした内容の傑作はいくつかあった。
やはり物語の描き方の問題なのだろう。
大友監督にはこういった心理ドラマは向いていないのではないだろうか(汗)。
綾野、松田の二人の演技で☆おまけ。