2020年 イギリス 113分
監督:ガイ・リッチー
出演:マシュー・マコノヒー、 チャーリー・ハナム、 ヒュー・グラント
コリン・ファレル、 ヘンリー・ゴールディング
ノワール・サスペンス。 ★★★☆
主人公は麻薬王のミッキー(マシュー・マコノヒー)。
彼は総資産4億ポンドの大麻王国を売却して引退を考えている。
妻(ミシェル・ドッカリー)と二人でのんびりと余生を過ごしたいぞ。誰か、俺の組織のよい買い手はいないか。
ミッキーが売却を持ちかけたのは悪の富豪のマシュー、その売却話に割り込んできたのが中華系マフィアのドライ・アイ。
そこにミッキーに怨みを抱くゴシップ紙編集長や、ミッキーの秘密大麻農園を襲った不良たちとその指導者のコーチ(コリン・ファレル)が絡んでくる。
と書くと、とてもややこしいように思えるが、人物造形がたっているのでそれほど混乱することはない。
やはり、ガイ・リッチーはこういった群像劇風の描き方が巧いんだろうな。
ガイ・リッチー監督といえば、「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や「スナッチ」がよかった。
いろいろな悪人集団の騙し合いや殺し合いを複雑に絡ませて、サスペンスものとして見せてくれる。
そのあとの「シャーロック・ホームズ」シリーズや「U.N.C.L.E.」は、確かに面白かったのだが、私がガイ・リッチー監督に期待したものといささかずれていた。
しかし、本作は、これぞ、ガイ・リッチー!という出来映えになっていた。
映画の構造も面白い。
ゲスな私立探偵のフレッチャー(ヒュー・グラント)が、ミッキーの片腕であるレイ(チャーリー・ハナム)に、密かに取材したネタを語る形になっている。
フレッチャーは、これだけの秘密を握っている、これをバラされたくなかったら2000万ポンドを払え、と脅しているわけだ。
フレッチャーの話の内容が映像化されているわけだが、時おりレイが、いやいやそこは違うだろ、と口を挟むと、あ、そうだ、本当はこうだった、と訂正映像になったりする。
時間軸も行ったり来たりするし、あのときは本当はこうだったんだ、という映像も入る。
フレッチャーとレイの腹の探り合いも、楽しいね。
麻薬マフィア同士の争いだから、もうばんばんと人が死ぬ。
知的な参謀といった雰囲気のレイも、やるときはやるのである。
秘密写真を取り返そうと不良を追ったレイは、逆に不良の集団にからまれてしまう。
と、レイはやおらコートの下からマシンガンを取りだして、いきなり威嚇射撃をおこなう。
坊やたち、こちらはお遊びじゃないんだぜ。舐めるんじゃないぜ。
素人である不良たちのとても相手ではない。こちら、本物のマフィアだぜ。
セレブ感いっぱいのミッキーの妻もなかなかにやるのである。
ミッキーをやっつけるために2人の手下を連れたドライ・アイが妻の事務所を襲う。
妻はおもちゃのような小型拳銃で手下の眉間をあっさりと撃ち抜く。
しかし弾は2発しかなかったのだ。
危うくレイプされそうになる妻。
そこへ、妻こそ命!のミッキーが駆けつける。まさに犯されそうになっていた妻が言う、あら、あなた。
粋だなあ。
脇役のような出方なのだが、コーチ役のコリン・ファレルが好い。
騒動の巻き添えを食っただけなのだが、「スナッチ」のブラッド・ピットのような感じで、何を考えているのだか判らないままに暴れまくる。
しかし一番の役者は、抜け目がなさそうに小狡くて、そのくせ意気地なしの探偵役のヒュー・グラントだったか。
とにかく久しぶりにガイ・リッチーらしい映画を堪能した。
お勧めです。