あきりんの映画生活

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「私が、生きる肌」 (2011年) 貴方はどこまでついて行ける?

2011年 スペイン 120分
監督:ペドロ・アルモドバル
出演:アントニオ・バンデラス、 エレナ・アナヤ、 マリサ・パレデス

ド変態、それとも狂気? ★★★

 

これぞアルモドバル監督の本領発揮!という映画になっていた。
並の神経ではこんな物語を映画にはできないだろう・・・。

 

主人公のロベル(アントニオ・バンデラス)は人工皮膚の権威であるような形成外科医。
彼の大邸宅の一室には特殊なボディ・ストッキングをまとった美女ベラ(エレナ・アナヤ)が幽閉されていた。
はて、彼女は何者? なぜこんな状況になっている?
しかも、ロベルがベラに再現しようとしているのは、亡くなった妻の顔なのだ。

 

始めのうちは、ただのド変態マッド・サイエンティストの話かと思っていた。
目を付けた女性をさらってきて、自分好みの顔かたちに整形して、自分の玩具にする・・・(汗)。
ところが、物語はそんな単純なものではなかった。
いや、いや、アルモドバル監督、さすがに一筋縄ではいかなかった。

 

主演はアントニオ・バンデラス
彼は初期のアルモドバル作品「アタメ」でも奇怪な人物像だった。
ヒロイン役のエレナ・アヤナはとても華やかで美しい女優さん。
身体の線をそのままあらわす特殊ボディ・ストッキング姿はなんともエロティックである。
(もちろんアルモドバル監督のことなので、惜しげもなく見せてくれる場面もあります)
そして訳ありの家政婦役にマリサ・パレデス。
彼女は「オール・アバウト・マイ・マザー」の名演を始めとして、もうアルモドバル監督作の常連。渋い俳優さん。

 

実は、交通事故に遭って一命を取り留めたはずの妻は、火傷のせいで醜く変貌した自分の顔に絶望して窓から身を投げたのだ。
俺が妻に元のような美しい顔を与えることができたなら、妻を失わなくてもすんだのだ・・・。
ロベルは激しく後悔する。

 

そして残された一人娘。
その娘も母を失ったトラウマからやっと立ち直りかけたのに、ある事件が原因で窓から身を投げる。
ロベルは激しく怒る、そして復讐を誓う。

 

さてこの映画、これ以上はストーリーの予備知識はなしに観る方が絶対に楽しめる。
なに、ベラの正体はそういうことだったのか!
えっ、それじゃロベルはそんな彼女と・・・!

 

ド変態なのか、それとも狂気なのか。
突き詰めると、この両者は同じ地点に向かってしまうのか。

 

アルモドバル作品の根底にはいつも母性への畏敬がある。
「オール・アバウト・マイ・マザー」はタイトルもそのままだし、ペネロペ・クルスがたくましく美しかった「ボルベール」もそうだった。
この作品でも、ロベルを支えたのは母親だったし、逃げ出したベラが一番に会いに行ったのは母親のところだった。

 

淡々としたオシャレな変態映画。
決して嫌いじゃないけど、あまりの変態ぶりに圧倒されてしまって、複雑…。