あきりんの映画生活

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「世界の終わりから」 (2023年) こんな世界は終わってしまえ!

2023年 日本 135分 
監督:紀里谷和明
出演:伊東蒼、 夏木マリ、 北村一輝

夢世界との往還。 ★★★☆

 

孤独で虐めを受けているような高校生のハナ(伊東蒼)の前に、突然黒服の政府の人間が現れる。
世界を救う手助けをして欲しい、これはあなたにしかできないことなのだ。
えっ? どうしてそんなことを私が? 私は生活費を得るためにアルバイトに行かなければならないんです。

 

紀里谷和明監督といえば、「GOEMON」「CASSHERN」といったどこか現時離れした世界を描いてきた。
今作も、不思議な能力を持つ女子高生が2週間後に滅びる世界を救おうとする物語。
普通の世界のすぐ隣に異世界が繋がっているような世界観で魅せてくれる。

 

虐めをしていた同級生の目の前で黒の高級車に乗せられたハナは、老婆(夏木マリ)に会う。
そして、2週間後に世界が終わる運命なのだが、ハナの夢によってそれが回避できるかもしれないと伝えられる。
実は、ハナは夢を通して過去から現実に影響を及ぼすことが出来る輪廻師の家系の者だったのだ。

 

ハナ役を演じた伊東蒼は決して華やかな女優ではないが、独特の存在感がある。
彼女の特徴的な八の字困り眉が印象的。
彼女の起用がこの作品の世界観にとてもマッチしていて、妙に説得力があった。

 

ハナは夢の中で戦国時代に跳び、謎の手紙を祠に届けることを依頼されたりする。
そしてその時代には、残忍な殺戮を繰り返す侍がいたり、必死に生き延びようとする汚れた少女がいたりする。

 

果たして殺戮者をいなくすれば世界は救われるのだろうか。
ここで興味深かったのは、殺戮者は世界の秩序を保つために殺戮をおこなっているのだという論理。
だから殺戮者を排除すればこの世界の秩序は破壊されてしまうぞ、という論理。

 

でも、そんな世界だったら、終わってしまった方が好い?

 

(以下、映画の最後に触れます)

 

最後、世界が終わりを迎えた未来の地球に、一人生き残った人類ソラ(冨永愛)が描かれる。
ソラは、世界が終わるまえにハナが埋めたカセットテープを見つける。そして戦国時代にタイムスリップして・・・。

 

これは何だ?というようなとんでもない展開なのだが、この最後が紀里谷監督のメッセージだったのだろう。
ソラが冨永愛で好いイメージとなっていた。彼女でなかったら、ちょっと浮いてしまっていたかもしれない。

 

紀里谷監督は、これが最後の監督作、と言っているとのこと。それほど打ち込んだ作品なのだろう。
しかし、この独特の世界観は彼ならではの物語を作っている。
もっと撮って欲しいところではあるのだが。