あきりんの映画生活

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「静かなる叫び」 (2009年)

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2009年 カナダ 77分
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ

銃乱射事件。 ★★★

ポスターのコピーは「あの日のことは今も、私の魂を揺さぶる」。
実際に起きた銃乱射事件を基に描かれており、現場に居合わせた一人の女性と男性を描いている。
77分という短めのモノクロ作品。
音楽もほとんどなく、ドキュメンタリーの感じですすむ。

モントリオールの理工科大学で、突然一人の男子学生が銃を乱射しはじめる。
フェミニズム思想に怒りを覚えて抗議するという理不尽な動機で、次々に女子学生を撃ち殺していく。
一瞬前までは平穏だった世界が、突然に殺戮の世界に変容する。
こんな目に遭うことにどんな意味があるというのだろう。

ヴァレリーも友だちと一緒に銃弾を受けて倒れる。
犯人がまた戻ってくる、死んだふりをして!
しかし、犯人は容赦なく銃弾を浴びせる・・・。
学友のジャン=フランソワはなんとか銃弾を避けて、犯人の目を盗んで負傷した学生を救おうとする。

10年前の映画だが、ドゥニ・ヴィルヌーヴが売れっ子監督となったためにDVD化されたのだろう。
あの衝撃作「灼熱の魂」の前の年の映画である。

台詞も少なく、登場人物の心情を語らせることもない。
犯人の男子学生、ヴァレリー、そしてジャン=フランソワの3人の視点を切り替えながら、ただ場面を切りとってドラマを描いていく。

自らの頭を打ち抜いた犯人の男子学生から流れ出した血が、殺害された女子学生から流れ出した血と、血だまりとなって一つになっていく。
モノクロの映像が血の赤さを消し去って、派手な映像ではないところで語っていた。
さすがに、ヴィルヌーヴ監督は鋭敏な感覚で事件を映しだしている。

映画の後半には、生きのびたヴァレリーとジャン=フランソワのその後の生き様が描かれている。
2人ともそれぞれにこの事件に大きく人生を影響されて生きたわけだ。
淡々と描かれているだけに、かえって深いものを感じる。

この実話を基にして、そこに居合わせた人の心情を無駄を省いて描く、というやり方・・・。
もしこの事件を、クリントイーストウッド監督が描いたら、どんな風な視点で切りとっただろう?と思ってしまった。