あきりんの映画生活

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「読書する女」 (1988年) 言葉を他人と共有したいの

1988年 フランス 99分 
監督:ミシャル・ドビル
出演:ミュウ・ミュウ

読み聞かせをする女。 ★★★

 

朗読する映画ということでまず思い出すのが、「きみに読む物語」。
あれは涙がにじんできてしまう、好い映画だった。
それに、小説「朗読者」を映画化したケイト・ウィンスレットの「愛を読む人」というのもあった。
未読・未見。あれも観なくては。
さて、本作は主演のミュウ・ミュウに惹かれて鑑賞。どんなだろう?

 

読書好きのコンスタンス(ミュウ・ミュウ)は恋人と同棲中。
ベッドの中で彼女は「読書する女」という本に夢中になり、恋人に読み聞かせている。
その本の物語が映画になっているという入れ子構造になっている。

 

小説「読書する女」の主人公マリー(ミュウ・ミュウの二役)は読書好き。
自他共に認める美声を生かして、客に本を読んで聞かせるという仕事を始める。
はて、お金を払ってまで本を読んでもらう人って、どんな人? 目の不自由な人ばかり? いやいや。

 

ミュウ・ミュウはこの映画のとき38歳。先日観た「五月のルイ」の2年前である。
マリーはもの静かな上品な女性なのだが、あんた、何を考えているんだ?といった行動を平然とする。
ミュウ・ミュウがその不思議な感じを上手く出していた。

 

さてマリーの顧客になったのは、どこか癖のある人物ばかり。
幼い頃から下半身不随の少年にはモーパッサンの「手」を読みきかせるが、ふいに彼は発作を起こしてしまう。
マリーは、精神病で死んだ作家の本を読むなと医師に叱られる。そんなものなのか? 変なの。

 

100歳になるという将軍の未亡人もいる。
レーニンマルクスが好きらしく、その誕生日には真っ赤な薔薇をベランダに飾ったりする。
そして彼女のメイドが、ツンデレでコケティッシュで魅力的。
下着の中に蜘蛛を飼っていると真顔で言う。そして蜘蛛に噛まれた跡を見せてくれたりする。
こんなメイドさんがいるメイド喫茶だったら通ってしまうかも・・・(行ったことがないので、どんなところなのか知らないのだが)。

 

離婚したばかりの中年社長にはデュラスの「ラマン・愛人」を読む。ヤバイ選択だな。大丈夫か?
彼は朗読をきくよりもマリーの身体に魅せられている(やっぱりね)。
朗読の最中にも身体を触りまくり、結局はマリーもベッドでその相手をしてやる。あんた、なに考えているんだ?
しかもその行為のさなかにも朗読を続ける。私は朗読のプロよ。

 

「五月のミル」の時も思ったのだが、フランス人の考え方や恋愛観はなかなか理解できない。
フランス人にとってはセックスをするのも、ちょっと親しい異性とお茶を飲むような感覚なのだろうか。まさかね。

 

シングルマザーから幼女への読み聞かせを頼まれたマリーは、幼女にせがまれるままに移動遊園地に行ったりする。
で、誘拐犯に間違えられて大騒動になったりする。
読み聞かせるのは「不思議の国のアリス」だよ。

 

下半身不随の少年は15歳なのだが、マリーのスカートから覗く足を見つめてばかり。
マリーも思いきりスカートをめくって見せてやったりする。
すると少年は、次はパンティをはかないできてくれ。と頼んでくる。おいおい。
でもマリーは次には本当にそうしてしまいそうだぞ。

 

下心がありそうな老判事は希少本だといってマルキ・ド・サドの『ソドム百二十日』を朗読させる。
なんかこんな客が多いな。

 

ヒロインをはじめとして、どこか常識からは外れたような人ばかりが、平気な顔をしてあらわれる映画。
お洒落でエロティックなお伽噺です。
性を開けっぴろげにした「アメリ」、といえば雰囲気としては近いかもしれない。
モントリオール映画祭で最優秀作品賞を受賞しています。