あきりんの映画生活

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「五月のミル」 (1989年) お葬式と五月革命、こりゃ大変

1989年 フランス 107分 
監督:ルイ・マル
出演:ミシェル・ピコリ、 ミュウ・ミュウ

葬儀に集まっての人間模様。 ★★★

 

ルイ・マル監督と言えば、サスペンス映画の傑作「死刑台のエレベーター」を撮り、スラップステップ・コメディの「地下鉄のザジ」を撮った才人。
そんな彼が晩年に撮ったのが本作。
1968年の五月革命を時代背景に、のどかな田舎町でくり広げられる親族の人間模様を描いている。

 

祖母が亡くなり、一緒に暮らしていた長男のミル(ミシェル・ピッコリ)のところへ兄弟や娘たちが集まってくる。
ラジオからはパリの五月革命の様子が聞こえてくる。
その影響で葬儀屋も来てくれず、葬儀の予定がすすまない。
遺産相続にもそれぞれの思惑が絡みあって、相談はなかなかすすまない。

 

オープニングで流れるジャズ・バイオリンに、もしやと思ったら、やはりステファン・グラッペリだった。
ジャンゴ・ラインハルトとのバンドでなじみ深い音色だった。
ルイ・マル監督の映画「ルシアンの青春」で使われていたのが、ラインハルト&グラッペリの名曲「マイナー・スイング」だった。

 

集まってくるのは、ミルの娘カミーユ(ミュウ・ミュウ)と彼女の子供たち、姪のクレールとその女友達、弟のジョルジュと彼の後妻リリー。
それに地元の公証人や家政婦もいる。
そこにパリで学生運動に参加していたジョルジュの息子と行きずりのトラック運転手まであらわれる。
ごちゃごちゃと人が集まっているのだが、まあ、多少の混乱は問題ない。

 

家を売り払うかどうか、銀食器を誰がもらうか、などなど、書斎にはまだ祖母の遺体が安置されているのに、みな勝手に騒ぎ立てる。
そしてピアノは弾くわ、歌うわ、踊るわ、飲むわ、喰うわ、喧嘩はするわ・・・。
フランスだなと思わされるのが、そのうちに当たり前のように始まる男女関係の騒動。

 

ミルは家政婦とよい仲になっていたようなのだが、弟の後妻リリーとも何か怪しくなってくる。おいおい。
ミルの娘カミーユは故郷の幼なじみの公証人と納屋でごそごそ。
姪のクレールはレズビアンなのだが、その女友達は若いジョルジュの息子に気を引かれたり、それに腹を立てたクレールは運転手の前でヌードになって挑発したり。おいおい。

 

基本的にドタバタ・コメディなのだ。
幼い孫娘がミルに尋ねる、どうして叔母さんは裸でベッドに友だちを縛ったりするの?(クレールはSM趣味もあったようなのだ)、ピルってなあに?(このおしゃまな孫娘が可愛い。)
みんな身勝手な登場人物なのだが、しかし、どこか憎めない感じ。
人々を見つめるルイ・マルの姿勢が基本的には優しいからなのだろう。

 

葬式が延期されて、皆でピクニックに興じたりもする。
中盤で、孫を連れたミルが近くの小川でザリガニ取りをする場面がある。その方法が何ともあっけにとられるようなもの。のどかで可笑しい。
ゆでたザリガニを皆で食べながら、またワインを飲んで騒ぎまくる。
フランス人って、こうなのか。やはり人種が違うなあ。

 

そのうちに、五月革命がこのあたりにも波及してブルジョワは殺されるという噂が流れてくる。
一同はいそいで森の中へと逃げ、疲労と空腹で夜を過ごしたりもする。大変なのだ。

 

革命が鎮圧され、遺産相続騒動も男女関係もなんとな~く収束して、親戚一同は三々五々街へ帰っていく。
一人残されたミルは・・・。最後の場面が余韻を残します。

 

騒々しくも愛すべき人たちの人間ドラマ。
大作といったものではありませんが、本音の人たちをゆるい感じで描いています。佳品です。