2021年 107分 フィンランド
監督:ユホ・クオスマネン
出演:セイディ・ハーラ、 ユーリー・ボリソフ
長距離列車でのロードムービー。 ★★★☆
モスクワに留学中のフィンランド人のラウラ(セイディ・ハーラ)。
恋人関係にある女性教授と一緒に、世界最北端の駅ムルマンスクへペトログリフ(岩面彫刻)を見に行く予定だった。
ところが恋人には所用ができて、彼女は一人で列車に乗り込む。
その長距離列車の6番個室に行ってみると、ロシア人青年のリョーハ(ユーリー・ポリゾフ)と相部屋だった。
これから炭鉱で働くために現地を目指すという彼は、酒に酔い、不作法にラウラに絡んでくる。
こりゃ、かなわんなあ。
ラウラ役の女優さんはまったく美形ではない。
寒冷地での服装のせいもあるのだろうが小太りに見え、無愛想。
しかしそこが有名俳優では出せないリアル感に繋がっていた(もしかすると、フィンランドでは有名な女優さんなのかもしれないが・・・)。
一方のリョーハ役の人はかなりのイケメンだった。
しかしあまりにも無神経で、ラウラにしつこく絡んでくる様は、観ていて本当に不愉快になってくるほどだった。
この調子で長距離列車の同室で過ごす様を観るのは、ちょっと辛いかな・・・。
ムルマンスクというのは世界最北にある駅とのこと。
そしてそこは、隣国同士であるソ連とフィンランドのかつての激戦地でもあったとのこと。
このあたりの世界情勢、歴史には疎いので両国の関係についてはよく判らないのだが、必ずしも良好でもないようだ。
そんな国の男女が狭いコンパートメントで同じ目的地を目指すわけだ。
途中で列車を降りようかも思ったラウラだが、思い直してまた列車に戻る。
しかし、食堂車へ行けば、またリョーハがやってきて絡み始める。
ほら、雪が降り始めたぜ、ビデオカメラで映せよ、記念になるぜ。
悪気があるわけではなさそうなのだが、もう、ほっておいてよ、と怒鳴りたくなる。
ほら、そんなにしかめ面だと早く老けるぜ。
驚くことに、列車はある駅では停車したまま一晩を過ごしたりもする。何という長距離列車なんだ!
で、乗客は朝まで途中下車したりするようなのだ。
リョーハは、近くに住んでいるおばあさんの家に行くよ、一緒にどう?とラウラを誘う。
あ、彼は本質的には悪い人ではないんだ。
人のいいおばあさん宅で一緒に食事をして泊めてもらうラウラ。
翌朝は、リョーハは早くからおばあさんのために薪割りをしてやったりしている。
なんか次第に打ち解けていくラウラとリョーハ。
ムルマンスクに着いてリョーハと(素っ気なく)別れたラウラはペトログラフを見に行こうとする。
しかし街の人はみんなこの季節は危険すぎてペトログラフを見に行くことはできないと言う。案内はしてくれるような人はいないよ。
えっ、せっかくここまで来たのに・・・。
がっかりしているラウラの前にリョーハがふたたびあらわれる。
さあ、ペトログラフを見に行こう、連れていってあげるよ。
えっ、みんな無理だといったのに、本当?
極寒の地での遺跡探しの旅が始まる。
ラウラはペトログラフをみることができたのか・・・・?
映画はじめのころにリョーハがラウラに尋ねる、愛しているはフィンランド語でどう言うんだい?
いろいろと絡まれて嫌気が差していたラウラは、”くそったれ!”という意の言葉『ハイスタ・ヴィットゥ』を、愛しているという意味だと嘘を教える。
映画の最後、リョーハがラウラに伝言の手紙を寄こす、そこには彼が描いた(下手な)ラウラの似顔絵に添えて『ハイスタ・ヴィットゥ』と書かれていたのだ。
シンプルな物語の映画である。
しかし二人のやりとりが、ぎくしゃくしたものから次第に暖かいものに変わっていくところは、観ていて心地よかった。
フィンランドとロシアの二つの国の関係をもっと知っていれば、この不器用な男女が担っているものをさらに理解することができたのだろう。
好い映画でした。
カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞しています。