1983年 日本 125分
監督:降旗康男
出演:高倉健、 大原麗子、 田中邦衛、 加藤登紀子
切ない恋愛もの。 ★★★
函館の街で小さな居酒屋「兆治」を経営する英治(高倉健)と、彼を取り巻く人々を描く人情ドラマ。
監督・降旗康男、カメラ・木村大作、そして主演・高倉健の黄金トリオでの作品である。
この顔ぶれなら、一定以上の出来は約束されたようなもの。
英治は奥さん(加藤登紀子)と二人で店を切り盛りしている。
この奥さんが英治の過去もすべて包みこんで支えてくれる好い奥さん。
狭い居酒屋は常連客でいつもにぎやかで、笑い声と馬鹿話が行き交っている。そんな店。
常連客で旧友のひとりに田中邦衛が出ている。
高倉健と田中邦衛といえば、もうそれは北海道である。
でも、舞台は網走ではないし、富良野にあ~あと歌声が流れるわけでもない(笑)。
それはさておき、ここに悲恋物語が絡んでくる。
実は英治にはかつて思い合っていたさよ(大原麗子)という女性がいたのだが、若く貧しかった二人は将来を考えて別れたのだ。
そしてさよは裕福な牧場主の元へ嫁いだのだが、未だに彼女は英治のことが忘れられないでいたのだ。
人妻になったのに、こういうのって困るよなあ。
無言電話を掛けてこられても、英治にももう奥さんがいるのだし・・・。
でも、不器用な英治はもちろん無碍にはできない。その優しさ(?)にさよもすがっている・・・。
まあ、健さんだから仕方ないんだけどね。
そういえば大原麗子って、何かのCMで「すこし愛して、なが~く愛して」と鼻にかかった声で言っていたなあ。
英治を始め、登場人物はみんな不器用な生き方をしている。
英治を思い切れないばかりに牧場に放火したり、家出をしてすすき野で暮らし始めるさよも不器用。
客のひとりに居丈高な河原(伊丹十三)がいて、英治に何かと文句を言うのだが、その彼にしたって実は面倒見がいいだけだったりする。
この映画を観ていて連想したのは「深夜食堂」。
小林薫主演のTVドラマがヒットして、映画も2本作られている。
裏路地の居酒屋を舞台にして、マスターとそこに集まってくる客の人情ものドラマ。
何か過去を背負っている雰囲気のマスターとか、癖のある常連客、コの字型のカウンターの店内とか、この映画を参考にしたのではないだろうか。
期待していたものよりもいささか甘かった。
言ってみれば一途な悲恋物語なのだが、健さんが堪え忍ぶ恋ではなかったところが、大きな敗着だったのではないだろうか。
大体が、英治が煮え切らないんだよな。奥さんがちょっと気の毒にな思えたほど。
でも、そうは言っても健さんだから、渋いよねえ。
最後に健さんが「元気出して、いこうぜ…押忍」って言ってくれる。
健さんには目深にかぶる黒い野球帽がよく似合う。今度買ってこようかな。