2024年 110分 日本
監督:武内英樹
出演:野村萬斎、 竹中直人、 GACT、 浜辺美波
奇想天外ファンタジー。 ★★☆
時はコロナ禍の2020年、首相官邸でクラスターが発生して総理大臣が急死してしまう。
ありゃあ、これは困ったぞ。
そこで政府は最後の手段として、歴史上の偉人たちをAIホログラムで復活させて最強の内閣をつくることにする。
原作は同名のビジネス小説とのこと。なるほど、面白い発想をする人がいるものだ。
日本政治版アベンジャーズとでも言ったらいいのか。
おふざけ感満載で、このあたりは「翔んで埼玉」シリーズ(同じ監督)に通じている楽しさだった。
総理大臣には大御所・徳川家康(野村萬斎)、そして補佐する閣僚として織田信長(GACT)、や豊臣秀吉(竹中直人)。
「鳴かぬなら」のホトトギス3大英雄がそろったのだからすごいね。
その他にも聖徳太子、紫式部、北条政子、天海僧正、などなど、誰もが知っている偉人を取り集める。
さあ、この偉人内閣がどんな政策方針をとったかというと、有無を言わさずにコロナ禍を沈静化させるためのロックダウンを敢行する。
そして全国民に生活資金を配布する。
すべてにおいて及び腰だった既存内閣ではとても出来なかったようなことを、圧倒的なカリスマ性でバンバンと実行してしまう。
全国民はその思い切った政策の効果に熱狂していく。
ここにあるのは、民主主義だ、民主主義だと騒いぐばかりで結局は何も出来ないではないかという、衆愚政治への皮肉。
有能な少数者が統治した方が世の中は上手く行くぞという極端例。
あれ、でもこれって、ヒトラーの出現を待望してしまった第一次世界大戦後のドイツ民衆と同じ考え方?
映画ではそんな内閣を取材していく新人テレビ局員(浜辺美波)を配したり、粗野だが格好いい坂本龍馬(赤楚衛二)が、「~ぜよ」と決めぜりふを言ったりする。
それに、「徹子の部屋」や「ミヤネ屋」?をパロディ化したり、某CMを真似してみたり。
国会質問をする某れんぽうさんをおちょくったり、居眠り国会議員を叱咤したり。
やりたい放題が愉快な展開である。
前半ではGACT様演じる織田信長が格好いいところを独り占めしている。
信長には秀吉も、お館さまと平伏して頭が上がらないところが面白い。
信長が退場したあとの後半になると、その秀吉が、歴史上の恨みをはらさんとしてか、家康を陥れて自分が天下を取ろうと画策する。
さてクライマックス。
ここまで抑え気味だった家康が朗々と長台詞を吐く。その迫力はさすがに野村萬斎というところ。
しかし、この映画で言いたいことを全部詰め込んでしまっていて、ちょっとやり過ぎ感があった、
家康が、国民に自主性が無い、自分で考えろと檄を飛ばすのだが、300年の長きにわたる江戸時代を維持できたのは、徳川幕府が民衆の自主性を奪っていたからではないのか?
まあ、そんな硬いことは抜きにして、充分に楽しめる映画だった。
同じ原作者の小説に「もしも彼女が関ケ原を戦ったら」というのがあるとのこと。
読んでみようかな。