2018年 日本 119分
監督:福澤克雄
出演:野村萬斎、 香川照之、 及川光博、 朝倉あき、 片岡愛之助
企業内幕もの。 ★★★☆
ご存じ池井戸潤原作小説の映画化第2弾である。
彼の小説は大別すると、半沢直樹や花咲舞シリーズなどのような大企業のサラリーマン内輪ものと、下町ロケットや空飛ぶタイヤなどの小規模の町工場ものとがある。
どちらも理不尽にいじめられてきた弱者が最後に相手をぎゃふんと言わせて、読者が溜飲を下げる。
これは人気が出るパターンだよなあ。
で、今作は典型的な大企業内輪もめもの。
サラリーマンは我が身に引き換えて、そんな馬鹿なことが、と思いながらも、感情移入して観てしまうだろう。
特に、会議の席上での怖ろしい上司からの叱責場面などは、自分がこんな目に遭ったらどうしよう、と背筋が寒くなるに違いない。
ゼノックスという親会社を持つ東京建電が舞台のドラマ。
定例の営業会議では鬼部長の北川(香川照之)が激しい檄をとばし、成績の上がらない部下を厳しく叱責する。
その席上で堂々と居眠りをしているのが万年係長の八角(野村萬斎)。
なぜかそんな彼を北川は咎めない。どうして?
物語の狂言回し的な役が、気の弱い課長の原島(及川光博)と、寿退社予定の浜本(朝倉あき)。
八角がパワハラで訴えたエリートやり手課長の坂戸(片岡愛之助)は、どうして左遷させられた?
あんないい加減社員の八角と、成績優秀の坂戸では、どう考えたって坂との方が会社にとっては大事だろうに・・・。
で、原島と浜本はその不思議な人事の裏を探っていく。
原作小説はタイトル通りに、営業会議や企画会議などの七章から成る連作短編集。
それが一つにつながって大きな物語となっていた。
池井戸流の軽快なよどみのない書き方で、読み始めると止められなくなる。
そして、この映画を盛り立てているのは、なんといっても野村萬斎と香川照之の顔芸のぶつかり合い。
いささかオーバー気味ではあったが、そこがまた面白く、魅せてくれた。
そういえばこの二人は、それぞれ狂言と歌舞伎畑の人だった。普通の映画役者ではない面が出ているのだろうか。
そして次第に会社がかかえていた暗部に迫っていく及川光博と朝倉あきのコンビもなかなかに的確な動きだった。
おどおど、あたふたとしながら物語を上手く進めていた。
浜本の不倫相手の正体には笑ってしまった。おいおい、お前だったのかよ。
(以下、ネタバレ気味)
「空飛ぶタイヤ」でもそうだったが、欠陥商品、そのリコールは大企業にとっては大問題である。
何か大事故が起きたときには責任問題、賠償問題が生じるし、なんといっても会社のイメージは落ちて、経営破綻をしかねない。
だから、何とかそれを隠し通してしまおうと画策するわけだ。
その陰蔽は誰の指示でおこなわれたのか?
実際の指示は課長が命じた。では、部長はそのことを知っていたのか?
それどころか、部長が指示を出していたのではないか。では、社長はそのことを知っていたのか? ・・・ ・・・
よく出来た映画でした。
サラリーマンなら必見でしょ、この映画。