あきりんの映画生活

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「冒険者たち」 (1967年) あなたと暮らしたいの、と彼女は言った

1967年 フランス 117分 
監督:ロベール・アンリコ
出演:アラン・ドロン、 リノ・バンチェラ、 ジョアンナ・シムカス

瑞々しい友情の冒険物語。 ★★★★

 

アラン・ドロンが亡くなった。享年88歳だった。
ということで彼を偲んでドロン映画マイ・ベスト5の中の一つである本作を鑑賞。
(ちなみに他の4本は「サムライ」、「太陽はひとりぼっち」、「さらば友よ」、そして「太陽がいっぱい」である)

 

有名な本作なので、あらすじはたいていの人が知っていると思う。
二人の男性と、彼らに愛されたひとりの女性の、波瀾万丈の、それでいて切なさの残る作品である。

 

曲芸飛行とカー・エンジンの開発という、まるで少年のような夢を抱き続けている二人、マヌ-(アラン・ドロン)とローラン(リノ・バンチェラ)。
彼らのもとに、前衛芸術家をめざすレティシアジョアンナ・シムカス)があらわれる。
言ってみれば、いい歳をした大人なのに純粋無辜な夢をすて切れていない3人なのだ。
3人の屈託のない付き合いが観ていて気持ちがよい。

 

この映画の時、アラン・ドロンは37歳。若いころの軽やかさに落ち着きが加わり始めているが、なんといっても華やかさを持っていた。
それに比してリノ・バンチェラは渋い。
この二人を気心の知れた親友という設定にしたことでこの映画は成功していた。
その二人に愛されたジョアンナ・シムカス。男っぽい仕草の中に垣間見える女性らしさが、なんとも魅力的だった。

 

やがて3人はそれぞれの出来事で夢を絶たれていく。
そんな3人が海底の財宝探しを始める後半は、それこそ冒険サスペンスものとなっていく。
そして3人は大金を手にするのだ。

 

マヌーから一緒に暮らしたいと言われたレティシアは、3人で楽しく暮らせたら・・・と答えをはぐらかせる。
そして、ローランには、あなたと暮らしたい、と思いを打ち明ける。
たまらんなあ。
この告白の直後に、大金を横取りしようとする悪者たちに撃たれてレティシアは死んでいく。

 

すでに中年であるローランはレティシアに対して一歩引いた気持ちがあったのだろう。
そして彼はマヌーのレティシアへの気持ちを察している。
一方で、マヌーはレティシアがローランに惹かれているのがわかってたのだろう。
何とも切ない恋心の交差と、奥ゆかしいような男同士の友情である。

 

レティシアの海への水葬シーンは幻想的だった。
十字架の形で海底へと沈んでいくレティシア
この映画の後、この映像に影響を受けた映画の場面は少なくなかったと思う。

 

映画終盤の舞台となる要塞島の絵柄は、本当にこんな素晴らしいところがあるのかと思わせるものだった。
このロケ地を得られたことも物語の雰囲気をぐっと高めていた。
それにこの映画に華を添えていたのが口笛で奏でられるテーマ曲だった。
なんでもドロンがこの曲「レティシアのテーマ」を歌っているとのこと。

 

最後、瀕死のマヌーを抱きかかえながらローランが言う、「レティシアはお前と暮らしたがっていたぞ」。
マヌーが答える、「この嘘つきめ」。そしてマヌーは死んでいく。ああ・・・。
ドロンが死んでいく映画としては、この「冒険者たち」と「サムライ」が代表的だと思っている。

 

ラストシーンは要塞島を上空から俯瞰しながら旋回する映像。
今ではドローンを使えば簡単にできてしまうのだろうが、当時はヘリコプターを使っての撮影だったのだろう。
海に浮かぶような城壁の様が詩情あふれるものになっていた。

 

青春映画と言うにはいささか語弊もある年齢の3人の出演者である。
それでもそう言いたくなるような清々しさと、そして切なさを残す映画だった。
傑作です。