あきりんの映画生活

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「レジェンド&バタフライ」 (2023年)信長様が姫を必要としているのです! 

2023年 日本 168分 
監督:大友啓史
出演:木村拓哉、 綾瀬はるか

戦国時代の一途な恋物語。 ★★☆

 

東映70周年記念作とのことで、去年あたりからばんばんと宣伝がされていた。
キムタクが登場した去年の岐阜の信長祭の行列沿道はものすごい人出だったとのこと。
それほどに東映が威信を賭けた記念作なら観ておこうじゃないの。

 

織田信長といえば、ほとんどの人はそのおおまかな生涯を知っているだろう。
尾張の一地方領主の子として生まれ、青年期にいたるまで大うつけと言われていたこと、隣国の美濃の濃姫と政略結婚したこと、圧倒的な兵力差のために誰もが負けると思っていた桶狭間の戦いで勝利したこと、足利義昭を担いで上洛したこと、浅井・朝倉と戦い、延暦寺を焼き討ちにしたこと、長篠の戦いで武田勢を破ったこと、そして本能寺で明智光秀の謀反に遭って死んだこと。
さあ、これをどんな風に新しい物語とすることができたのか・・・。

 

映画は濃姫と出会うあたりから、本能寺の変で二人の別れが訪れるまでを描いている。
タイトルからも判るように、この映画は信長と濃姫帰蝶)夫婦の物語だった。
二人の出会いでは互いに最悪の感情を抱いていて、やがて互いを必要とする絆が生まれてくる、といった王道の恋物語だった。

 

二人の初夜の場面、障子の外では家臣や侍女たちが興味津々で聞き耳を立てている。
しかし、中の二人は睦み事どころかとっくみあいの大げんかをしていたのだ。
その物音を勘違いした信長の家臣が、姫は激しい方なのか?と尋ねる(濃姫は3回目の結婚だった)。濃姫のおつきの侍女(中谷美紀)が頷きながら、かなり、と答える。
面白い場面だった。

 

戦国時代の映画だけれども、合戦場面は皆無に近い。
信長の台頭といえば桶狭間の大逆転劇だが、そこも全く戦の場面はなく、ただ勝ちの報告があるだけ。
美濃との戦だっ、と叫んで、次の場面ではもう勝利を収めて稲葉城に入城している。
ま、この映画、戦国時代を背景にした恋物語、夫婦愛物語だから、そういう描き方にしたのだろう。

 

信長は濃姫に対してツンデレ的なところも見せる。
キムタクにそんな態度を取られたら、世の女性方は普通はメロメロになってしまうだろう。
しかし、綾瀬はるか演じる濃姫は違ったのである。
桶狭間の戦いでは鼓舞し、足利将軍を利用して天下を取るように、信長を叱咤激励するのである。
うん、好いのではないかな。

 

前半の濃姫をこうした気性の荒い女性像で描いておいて、終盤の病に倒れた弱い濃姫に繋いでいくあたりは上手く作っていた。
信長が市で買ってやった蛙の置物の扱いはいささかあざとかったが、許容範囲。

 

斎藤工が演じた徳川家康。出番は少なかったけれども結構強烈。
明智光秀がわざと家康の饗応に失策をして信長に打擲されるのだが、そのあとに家康が光秀の耳元で「お見事」とささやく。
家康の狸親父ぶりが垣間見える逸話だった。

 

(どうでもよい呟き)
髪型、衣装が似ているので(当たり前だけれど)、どうしても大河ドラマに登場する岡田信長准一が重なる。
主役が入れ替わっていたら、どうだったのだろう?

 

結論。
決して嫌いではないキムタクなのだけれど、この映画は綾瀬はるかのものになっていたと思えるぞ。
大友啓史監督も「るろうに剣心」ほどの冴えではなかったな。