
1973年 118分 イタリア
監督:リリアーナ・カバーニ
出演:シャーロット・ランプリング、 ダーク・ボガード
R18指定のラブストーリー。 ★★★☆
ポスター映像があまりにも有名なこの映画、初鑑賞である。
シャーロット・ランプリングが28歳 ダーク・ボガードは51歳の時の作品となる。
舞台は戦後10年あまりが経ったウィーン。
元ナチス親衛隊員のマックス(ダーク・ボガード)は、素性を隠し、ひっそりとホテルのフロントで働いていた。
そんなある日、ルチア(シャーロット・ランプリング)と再会してしまう。
ルチアは、かつてマックスが強制収容所で性の愛玩物として弄んだ少女だったのだ。
映画は、現在の二人と、かつてのナチス時代の二人の映像を絡み合うように写しだしてくる。
絶対的な権力者であるマックスはルチアの生殺与奪権を持ち、ルチアには服従する以外に生き延びる道はなかったのだ。
むきだしになった性的な欲望があり、強者と弱者という否応のない立場の違いが支配する二人の関係。
しかしマックスは、ルチアが嫌っていた男の首をダンボール箱に入れてプレゼントしたりもするのだ。
そして、ナチス帽を被ったトップレスサスペンダー姿で、居並ぶナチス高官たちの前で踊るショートヘアのルチア。
おそらくはぶかぶかのズボンの下には下着も着けていないであろうその姿は背徳的であり、異様な美しさでもあった。
映画史に残る場面であるだろう。
戦後の今、マックスにとってはかつての自分の罪を知る生き証人であるルチア。
一方のルチアにとっては辛く屈辱の日々を想い起こさせるマックス。
互いに再会に戦慄した二人だったはずなのに、なぜか二人は背徳にまみれた愛に引き込まれていく。
これまで歳を重ねてからのシャーロット・ランプリングしか観たことが無かったので、失礼ながら若い日の美しさには驚いた。
中性的なのにどこか肉感的。高潔なのにどこか蠱惑的。
さすがに並ではない存在感が若い頃からあったのだな。すごい女優さんだ。
原題は「ナイト・ポーター」で、ホテルの夜間受付人というほどの意味。
なんのたわいもない原題を「愛の嵐」とした邦題には感心する。
配給会社の担当者には、ヴィスコンティ監督の「夏の嵐」が頭に残っていたのではないかな。
あらかじめ知っていた断片的な情報からは、ナチス時代におこなわれた少女に対する残酷な仕打ちを告発するような内容の映画かと思っていた。
まったく違った。
これはそういう特種な状況下におかれた男と女の歪んだ情念の物語だった。
(以下、ネタバレ)
最後、すべての望みを断ったような二人は、餓死寸前の身体でよろよろと夜の街へ彷徨い出す。
それは浄瑠璃でいえば道行きを思わせるような、死出の男女の姿だった。