あきりんの映画生活

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クジラの島の少女 (2002年)

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2002年 ニュージーランド 102分
監督:ニキ・カーロ
出演:ケイシャ・キャッスル・ヒューズ

ポリネシアの少女の物語。 ★★★

マオリ族の長の家に女の子が産まれる。
その子はパイケアと名付けられ、島のなかで輝くように育っていく。
パイケアは、実はマオリ族の伝説の勇者の名前である。
伝説上のパイケアは新天地を求めてクジラに乗ってこの地へたどり着いたのだ。

しかし、マオリ族は代々男を族長としてきた。
だから族長のコロ(パイケアの祖父)は、男の子たちの中から伝統を受け継ぐ者を育てようとする。

映画がはじまり、すぐにパイケアに扮する主役のケイシャ・キャッスル・ヒューズに、とにかく惹かれる。
部族の伝統を守ろうとする純真な気持ちが、強い意志を秘めた面持ちにあらわされていて、なにか清々しいものを感じるのだ。
彼女の持つ魅力でこの映画は成功したとも言えるほど。

パイケアを可愛がりながらも、祖父コロはどうしてもパイケアが男の子でなかったことを悔やんでしまっている。
パイケアも、祖父のそんな気持ちはよく判っている。
そのうえで祖父が好きだし、部族が好きなのだ。
だから、女の子なのだけれども、何とか自分にできることで伝統を守りたいと一生懸命にがんばる。健気だ。

島の人たちは善人ばかりである。
気持ちの行き違いはあっても、みんな部族を愛しているし、伝統も重んじている。
ポリネシアの民の歌や踊りも出てくる。
舌を突き出した珍妙な顔をして相手を威嚇する、というところなど、真面目にやると結構な迫力で、本物はすごいなと思わされる。

明るい日差し、真っ青な海、畑の上を吹き抜ける風。
そんなポリネシアの風景が作品の雰囲気となっている。
祖父もパイケアもそれぞれに辛いことがあるんだけれども、それでもどこか都会の鬱状態とは違うものを感じさせる。
辛いのだけれども、とても人間的なのだ。
(どう言えばよいのか、都会の鬱状態は非人間的な感じがする、といえば多少はニュアンスが伝わるかな?)

物語は淡々とすすむ。人によっては退屈に思うかも知れない。
しかし、そんな”都会的な”せせこましい欲求は捨てたところで観るべき映画。

(ネタバレ)

映画の終盤、なんの吉凶か、たくさんのクジラが渚に打ち上げられる。
人々が絶望的になったときに奇跡が起こるわけだが、クジラはパイケアが勇者であることを受け入れていたわけだな。

最後のシーンは台詞もなく、大海原を行くマオリ族の人々が映し出される。
パイケアが誇らしげに祖父と並んで座っているところを観ると、本当に気持ちが洗われる。
良い映画を観たな、という気持ちになる。

当時13歳だったケイシャ・キャッスル・ヒューズは実際にマオリ族の少女とのこと。
この年のアカデミー主演女優賞にノミネートされている。
同賞ノミネートの最年少記録は未だ破られていないとか。