1972年 イギリス 93分
監督:キャロル・リード
出演:ミア・ファロー、 トポル、 マイケル・ジェイストン
ロンドンを舞台にした(夫婦の)ラブ・ストーリー。 ★★☆
一流会計士のチャールズ(マイケル・ジェイストン)は、妻ベリンダ(ミア・ファロー)が浮気をしているのではないかと疑って、私立探偵クリストファルー(トポル)をやとって妻を尾行させる。それというのも、ベリンダが行き先も告げずに家を空けるからだった。
この映画の主役はもちろんミア・ファローなのだが、白いレインコートに白いハンチングの私立探偵役トポルのとぼけた味わいが要となっていた。
かれが主役と言ってもよいほど。
トポルはこの映画の前の年のミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」の主役としてしか知らなかったが、とても存在感のある役者だと思う。
実際のところは、カリフォルニアから来たベリンダは自由人で、窮屈な上流社会の生活になじめなかっただけなのだ。
そこでベリンダはロンドンの街を当てもなく彷徨っていたのだ。
その様はどこか寂しげで、画面には優しさが漂う。
やがて私立探偵との会話のない尾行劇がはじまるのだが、これがユーモラスで、気持ちが暖かくほぐれていくような感じとなる。
特筆すべきは哀愁を帯びた印象的なメロディの主題曲。
女性コーラスでこの曲がロンドンの風景に幾度となく流れる。一度聞けば耳に残るような、そんな名曲である。
音楽のジョン・バリーと言えば007シリーズの音楽で有名だが、こんな良い曲も作っていたんだな、とあらためて感心。
この作品のポイントは、自由人のベリンダが夫を愛しながらも求めた自由な心であろう。
30年以上前の作品で、当時はヒッピーなどが自由の象徴となっていたわけだ。
社交会風のたてまえやしきたり、そんなものに縛られるのを忌避する様が描かれる。ベリンダは夫が主催する食事会や、観劇を、口実をつけては欠席してしまう。
そんなベリンダの行動が理解できなかった夫チャールズに対して、私立探偵の忠告は、という展開になっていくわけだが・・・。
ただ、今の私にはそんなベリンダの行動が、どうしても自分勝手な行動とも思えてしまった。
あまりにも精神的に未熟で、甘えているのではないかというふうに思えてしまったのだ。
この映画、もっと若いときに観ていれば、もっとベリンダに気持ちが寄り添えたのだろうと思う。
残念ながら、私が歳をとりすぎていた。残念ながら、夫チャールズと同じように、すでに私は自由人の心を失っていたんだね。
良い映画なんですよ。