あきりんの映画生活

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「インビクタス/負けざる者たち」 (2009年)

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2008年 アメリ
監督:クリント・イーストウッド
出演:モーガン・フリーマン、 マット・デイモン

ネルソン・マンデラを描いた映画。 ★★★★

「チャンジリング」や「グラン・トリノ」を観ると、イーストウッド監督が信念の人だということがよく判る。
この作品の主人公、南アフリカ初代黒人大統領ネルソン・マンデラもまた敬服に値する不屈の信念の人である。
だから、イーストウッドマンデラ大統領を撮ったのはよく判る。

南アフリカアパルトヘイト時代に、マンデラは27年間もの理不尽な牢獄生活を強いられた。
国際世論に押されて彼が釈放され、そして黒人も加えた全国民による総選挙で彼が大統領に選出される。
それがこの映画の始まりである。

黒人は大多数派となったのだが、その生活は貧しく、一方、少数派となった白人はこれまでのアパルトヘイト政策の報復を恐れている。
国の制度が変わったことによって、国中に新たな怨嗟や憎悪、恐怖が渦まいていたわけだ。
マンデラは新しい国を一つにまとめようとする。人種間の憎しみをなくそうとする。

マンデラモーガン・フリーマン)は自分の警護役に白人のメンバーも加える。
それまでの黒人警護官は、われわれの仲間を捕らえて牢獄に入れた連中をなぜメンバーに加えるのか?とマンデラに詰め寄る。マンデラは黒人と白人の間の壁を取り去ることを、まず自分の周りから始めたわけだ。
えらい、と思ってしまう。

映画は、南アフリカで開催された世界ラグビー大会に出場した弱小の南ア・チームとマンデラの交流を軸にすすむ。
マンデラは分裂の危機にあった国を、ラグビーをとおして愛国心を人種を越えた共通のものにしようとしたのだ。

これはマンデラを描いた作品であり、文句なしに良い映画である。
ネルソン・マンデラという人物の人間性に、ただただ感銘を受ける。
マンデラが27年間を過ごした牢獄をみてきたフランソワ(マット・デイモン)は、あんなに酷い目にあわせた相手を何故赦すことが出来るのだろう、と思う。
映画を観ている者も同じように思う。並の人間に真似できることではない。

実在のマンデラは、自分を映画化するならモーガン・フリーマンに演じてもらいたいと言ったという。
それを聞いたフリーマンがマンデラに会いに行き、そしてイーストウッドに監督を依頼したという。
マンデラを演じたフリーマンは素晴らしかった。自然体のようで、いつの間にかフリーマンをマンデラ本人と思ってしまうほど。

世界ラグビー大会の結果は、史実通りに歴史的な番狂わせとなっていく。
そんな試合の中継をしている白人警官のパトカーのラジオ。黒人の少年が聞きたそうに周りをうろうろしている。
やがて警官と少年は一緒にラジオを聞くようになり、そして一緒に勝利を喜び合う。
見ている者の気持ちも、単純に暖かくなってくる。

くり返しになるが、これはマンデラを描いた良質の映画である。
マンデラ人間性がよく伝わってくる。

そのためか、イーストウッドの映画としてはやや毒気のようなものが足りないか、とも思ってしまう。
しかし、そんなことはどうでもよいぐらいに好い映画でした。