あきりんの映画生活

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「ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う」 (2010年)

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2010年 日本 127分 
監督:石井隆
出演:竹中直人、 佐藤寛子、 大竹しのぶ、 井上晴美、 東風満智子

エロティック・バイオレンス。 ★★★

映画の冒頭で、いきなり殺人が起きる。そして母と娘二人は風呂場で死体を切り刻む。
なんということだ、これはまるで「冷たい熱帯魚」ではないか。
あの映画もすさまじかったが、この映画もすさまじい。こちらでは死体を”透明にする”のではなく、”熟成させる”。

映画全体がささくれ立っている。
物語の内容がそうだし、登場人物たちの気持ちもそうだし。だから、観ている者の気分も次第にささくれ立ってくる。
決して気持ちのよい映画ではない。しかし、すごい。

だだっ広い倉庫の2階に住んでいる何でも代行屋の紅次郎(竹中直人)のところに、淋しげな女、れん(佐藤寛子)が捜し物の依頼に来る。
富士の樹海でなくしたローレックスの腕時計を探して欲しいというのだが、その時計は、実はばらばら死体を捨てるときにうっかり一緒に捨ててしまったものだったのだ。

れんは、あどけない聖少女と、他人を平気で踏みつけていく悪女との、二重人格者のようだ。
れんも父に犯され、異母姉に苛められ、辛い過去を背負っている。
まともな神経では生き続けることはとうていできなかったのだろうと思わされる。
そんな女性に次郎は惹きつけられ、翻弄されていく。

びしょびしょと雨の降る夜の倉庫の部屋、ネオンサインばかりが毒々しい饐えたような繁華街、猥雑なショーを売り物にしている場末の飲み屋。
気持ちはどんどんと荒んでいくぞ。

そして、富士の樹海の奥にある石切場跡の洞窟。
そこで延々と続く佐藤寛子の全裸での狂気シーンがすさまじい迫力である。
自分の裸体をむち打ちながら、慟哭する。

石井隆監督は、もともとはエロティック劇画家、イラストレーターから出発した人。
衝撃の残る映画ではあるが、決して気持ちの良い映画ではなかったなあ。