2009年 アイルランド 111分
監督:ニール・ジョーダン
出演:コリン・ファレル、 アリシア・バックレータ
寒村のラブ・ロマンス。 ★★★
舞台はアイルランドの鄙びた漁村。
アルコール中毒だったシラキュース(コリン・ファレル)は、人に背を向けて生きているような漁師。
鈍色の海で一人で漁をしている彼のトロール網に、若い女性がかかってくる。えっ?
まるでお伽噺のような物語のはじまり。
撮影はクリストファー・ドイルで、重く雲が垂れ込めたような押さえた色調で描く北国の港町の映像は美しい。
アイルランドはかなり以前に旅をしたことがあるが、空が晴れるなんてことは永遠にないのではないかと思われるような、荒涼とした世界だった。
オンディーヌと名乗るその女(アリシア・バックレーダ)は、人に会うのは嫌だ、誰にも会いたくないと言い張る。
彼女は何者? 彼女はなぜ網に掛かってきた?
シラキュースは死んだ母が暮らしていた廃屋へ彼女を連れて行く。ここなら誰にも見られないで過ごすことが出来るよ。
謎だらけのオンディーヌなのだが、そんな彼女にシラキュースは惹かれていく。
コリン・ファレルは好きな俳優。目と眉がとてもくっついている(笑)。
おまけに眉が八の字風なので、いつも困ったような表情に見える。そこが好いのだよ(笑)。
(ちなみに彼の映画で一番好きなのは、コン・リーと禁断の恋をする「マイアミ・バイス」。)
それはさておき、
シラキュースには別れた奥さんがいて、一人娘のアニーはその奥さんと暮らしている。
このアニーがこまっしゃくれて大人びているかと思えば、無邪気に幼くて、可愛い。
アニーは足が悪くて車椅子が必要な状態なのだが、電動車椅子に乗ってオンディーヌに会いに来る。
オンディーヌのことを本気でアザラシの化身だと信じているところが、また可愛い。
シラキュースとオンディーヌが惹かれあっていき、アニーとオンディーヌが仲良くなって、不思議な好いことも起こって、おとぎ話のように展開していく。
でも、やはりオンディーヌには知られたくない秘密があったのだよ。
魚村の人々は基本的に好い人ばかり。
別れた奥さんも、奥さんの今の彼も、シラキュースの懺悔を聞いてくれる牧師さんも、素朴で善人。
だから観ていて気持ちがよい。
寒々しい風景なのだが、人々はほんのりと暖かいのだ。
そして、終盤近くになってオンディーヌの秘密が明らかになる。
実はこの秘密というのが意外に世俗的なことだったのには、ちょっと拍子抜け。
それでもハッピー・エンドだったので、あとくちは悪くなかった。
(余談)
この映画での共演をきっかけにして、コリンとアリシアは付き合いはじめて、子どもも設けたとのこと。