1968年 アメリカ 102分
監督:ノーマン・ジェイソン
出演:スティーブ・マックィーン、 フェイ・ダナウェイ
お洒落な銀行強盗。 ★★★★
スティーブ・マックィーンの映画では一番好きなのではないだろうか。
表の顔は大会社の社長、優雅な生活。裏の顔は頭脳的な銀行強盗の黒幕。
三つ揃えスーツのマックィーンなんて、この映画以外では観ることはできなかったのではないだろうか。
5人の実行犯を操って大金を手にしたマックィーン。
長い葉巻を優雅にくゆらせながら、満足げにニコッとする。この表情がなんともお茶目な感じがしていい。
そう、彼にとっては銀行強盗はスリルに満ちたお遊び。
そしてその銀行の被害を解消すべくあらわれるのが、すご腕保険調査員のフェイ・ダナウェイ。
この映画、マックィーンももちろん好いのだが、やはりフェイ・ダナウェイの魅力に拠るところも大きい。
マックィーンが犯人だと目星を付けたダナウェイは、自信満々で彼に対峙して、彼を籠絡しようとする。
たとえば二人でお酒を飲みながらチェスをする場面。
思わせぶりな男と女の駆け引きがゲームに反映されていく。この官能的な大人のムードがたまらないなあ。
いかにもお洒落な映画を撮りました、という感じで迫ってくる。
画面分割はどんどんするし、バチバチの付けまつげにミニスカートのダナウェイもあの時代のファッションできめている。
この「華麗なる賭け」という邦題も素晴らしい。
原題は「トーマス・クラウン・アフェア」で、ビアース・ブロスナンでリメイクされたときは、この原題をそのまま使っている。
ちなみに二つの映画の新旧対決では、圧倒的にオリジナルの勝ち、というのが私の判定。
有名な主題歌「風のささやき」が、また、泣かせるほどに好い。
作中ではマックィーンがグライダーで大空を滑空している場面で流れる。好いなあ。
作曲はシネマ・ジャズの第一人者、ミッシェル・ルグラン。さすが。
(もちろんこの年のアカデミー主題歌賞をとっている)
映画は、出だしこそ用意周到な銀行強盗のサスペンスものだが、中盤からはラブ・アフェアとなっていく。
ダナウェイにしても、銀行強盗をつかまえるための手練手管であったはずが、いつの間にか自分でもそれだけなのかどうかが判らなくなっていく危なさがお洒落。
一方のマックィーンのほうはというと、彼女にぞっこんに見せかけて、ちゃんと裏の手を打っておくというラブ・アフェアがお洒落。
みえみえにも思えるこの軽さが好いなあ。