あきりんの映画生活

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「鍵泥棒のメソッド」 (2012年)

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2012年 日本
監督:内田けんじ
出演:堺雅人、 香川照之、 広末涼子

人生入れ替わり。 ★★★☆

「アフタースクール」がとても好かった内田けんじ監督。
この映画も脚本・監督となっていたから、オリジナル・ストーリーなのだろう。
前作のような”騙され快感”はなかったものの、さすがの上手さを楽しんだ。

登場人物は3人。
まずは会議の場で、わたし、結婚します、と宣言する水嶋香苗(広末涼子)。
えっ、誰と? と皆が驚くところをみると、今まではそんな浮いた話は皆無だったのだろう。
相手はこれから探します、という香苗に皆、唖然。ヘンな香苗に、観ている者も唖然(笑)。
それなのに、それじゃみんなで協力してお相手を見つけましょうと、部下が声をそろえるあたりが、この映画のちょっとすっとぼけた雰囲気を好く出していた。

汚い安アパートで自殺しようとして失敗した売れない役者の桜井(堺雅人)。
下がり目の堺雅人なので、だらしないダメダメ男ぶりが自然に伝わってくる。
彼は偶然にただ券を見つけて、近くの銭湯に出かけていく。

一方、すご腕殺し屋のコンドウ(香川照之)は、あざやかに一仕事終えた帰りに偶然に見かけた銭湯に立ち寄る。
そこで石けんに滑って大転倒をして頭を強打。記憶喪失になってしまう。
転倒したコンドウの近くにいた桜井は、なんと、彼と銭湯のロッカーの鍵をすり替えてしまう。
あれあれ、どうなる?

こうしてダメダメ男の桜井はコンドウになりすます。
クールな殺し屋のコンドウは自分が誰だったか判らず、銭湯に残されていた所持品から桜井だということにされてしまう。
この映画のミソは、入れ替わった二人が対照的な人生を送っていたところ。
それぞれ、大きな落差の新しい人生に放り込まれてしまうわけだ。

桜井がコンドウの豪華なマンションの部屋に行ってみると、大金はあるわ、怪しげな武器は隠してあるわ、こりゃ、自分がすり替わった人物はただ者じゃないぞ。どうしよう?
そこへ、殺人の依頼者からの連絡も来たりする。
おいおい、ますます危ない情勢に追い込まれていくぞ、どうしよう?

一方の記憶喪失のコンドウ。
教えられた部屋に戻ってみると、そこはみすぼらしいわ、汚いわ、これが本当に自分の部屋?
それに、どうも自分は貧乏役者らしいぞ。
きれい好きのコンドウは部屋を片付け掃除をして、エキストラの仕事まではじめる。
そんなコンドウに、偶然に知り合った香苗が好意を持ったぞ。

堺雅人香川照之が、どこまでも呆けていて面白い。
それまでの自分と違う環境にあたふたとしながら、なんとかなり切ろうと頑張る姿がコミカルでもある。
(私は、堺雅人というと「クヒオ大佐」、香川照之といえば「キサラギ」の、それぞれにユニークな役を思い浮かべてしまう)

さて。何かと演技に不評を買う広末涼子(私は嫌いではありません、念のため)。
この作品では無表情で感情が現実から浮いているような役だったので、割と好かったのではないだろうか。

大金を狙う本物のヤクザもあらわれて、桜井は一大芝居を打ったりもする。
このあたりはコミカルな展開ながらも見せ場になっていた。

コンドウが実は伝説の殺し屋では香苗の恋もどうなることかと思っていたのだが、そうか、そういうことだったのか。
気持ちよく映画は終わっていく。よかったね。

内田けんじ監督、次回作も期待していますよ。