あきりんの映画生活

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「パリ3区の遺産相続人」 (2014年)

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2014年 フランス 107分
監督:イスラエルホロビッツ
出演:ケビン・クライン、 マギー・スミス、 クリシティン・スコット・トーマス

過去の因縁が・・・。 ★★☆

疎遠だった父親が亡くなり、パリの高級アパートを相続することになったマティアス(ケビン・クライン)。
しめしめとニューヨークからパリにやってきたのだが、そのアパートにはイギリス生まれの老婦人マティルド(マギー・スミス)が、娘のクロエ(クリスティン・スコット・トーマス)と一緒に住んでいた。
あれ? どうなっているんだ?

この映画で眼目となるのが”ヴィアジェ”というフランス独特の不動産売買契約。
簡単に言うと、物件を月賦で買うようなもの。
その月賦は、元の持ち主が生きている間中、払い続けなくてはならない。
しかも、元の持ち主は死ぬまでその物件に住み続けることができる。
だから、元の持ち主がすぐに死んでくれればとても安く買えたことになるが、元の持ち主が長生きするといつまでも月賦を払わなくてはならない。
変な制度である(笑)。

ということで、マティアスは毎月のお金をマティルダに払わなければならないわけだ。
おまけに、自分が住むためには部屋代を払わなければならない。
こんな物件、相続しなければよかった?

この映画、基本的には人情コメディ風、である。
妙な制度にあたふたするマティアス、すまし込んで悠然としているマティルダ、そしてかりかりとしてマティアスと衝突するクレア。
しかし、内容は次第に重いものになっていく。

(以下、ネタバレ風)

実はマティアスの父とマティルダはお互いに不倫の恋人同士だったのだ。
それを苦にしたマティアスの母はマティアスの目の前で自殺していた。
クロエも、両親から愛されずに育ったと苦悩していた。
(しかも、クロエは母親と同じように妻子のある男性と不倫をしている)
3人のそんな過去に対する思いが交差しはじめる。

感覚的に違和感を覚えたのは、マティルドがあまりにも自分の過去を正当化していること。
自分の行為によって、マティアスもクロエも苦しんだことは明らかなのに、そのことになんの痛みも感じていない。
100歳近くなると、自分の過去に対しては評価をせずにただ受けいれるようになるのだろうか。

不満点もある。
あんなに衝突していたマティアスとクロエは何故、惹かれ合うようになった?
あまりにも唐突に二人の関係が変化してしまって、あれ?という感じだった。

人間関係から生じるドラマは劇的であった。
しかし、どうももうひとつのりきれなかった感じがある。

予告などでは、マティアスの父が残したかったものの真意は?などと思わせぶりだった。
しかし、そこには何も美しいものはなく、父親の不倫恋愛の結果だけだったじゃねえか、と思ってしまったのだ。

軽いコメディではありません。
結構、どろどろとした感情のぶつけ合いのある内容です。