あきりんの映画生活

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「フォロウィング」 (1998年)

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1998年 イギリス 70分
監督:クリストファー・ノーラン

時間軸が錯綜するサスペンス。 ★★★☆

クリストファー・ノーランの長編第1作。
モノクロの70分というコンパクトな作品で、ノーランは製作・監督・脚本・編集・撮影の5役をおこなっている。
まさに彼が作りたいように作った映画。

自称作家志望のビルは、創作のヒントを得るために、行きずりの人のあとをつける行為をおこなっていた。
ほんの好奇心からの行為で、同じ人物の尾行はしないとか、夜は若い女性を尾行しないとかの自己ルールも作っていた。
この映画は、そんな興味本位の行動から生じたサスペンス劇。

しかし、ある男をつけていたビルは、その尾行がその男、コッブに見抜かれてしまう。
そのコッブも住人が出かけている他人のアパートに不法侵入し、私生活を覗き見る行為をおこなっていた。
どっちもどっちだなあ(笑)。
コッブにそそのかされて(?)、ビルも彼と一緒に不法侵入をおこなうようになる。

実際にそんなことをする人は少ないだろうが、雑踏のなかで見つけた適当な人の後をつけてみる、これは少なからず興味の惹かれる行為である。
他人の生活をこっそりと盗み見するようなわくわく感があるような気もする。
さらに住人のいない部屋に忍び込んでその人の生活を実際に盗み見する、これはもっとわくわくするかもしれない。
ま、そこまでやると、重大犯罪になってしまうが・・・。

コッブはわざと侵入した痕跡を残し、安価なものを記念に持ち帰る。ピアスの片方だけとか。
彼によれば、誰でも人は秘密を知られたくないという気持ちと同時にそれを見られたいという欲望があるのだ、という。

映画は、あれ?と思う映像にふいに切り替わる。
長髪だったビルが、次の場面では短髪となり、なぜか倒れて苦しんだりしている。
あるいはビルはある女性の写真を取りだすのだが、こんな写真はどこで入手したんだ? この女性は誰だ?

そうなのだ、この映画は時間軸が錯綜しているのだ。
初めは戸惑う。そして、これは後でどうつながってくるのだ?と覚えておかなくてはいけない。
なかなかに大変、緊張しながら観なければならない(苦笑)。

やがてビルは、コッブと二人で侵入したアパートで見た写真の女性に惹かれていく。
そして彼女の尾行を始めてしまう。
そうか、あの写真の女性は彼女だったんだ。

このような時間軸を錯綜させる構成が、この映画が取られた当時にどのぐらいあったのだろうか。
それは置いておくとしても、この映画ではこの時間軸の錯綜はほどよい緊張感に寄与していた。

最後に向かってすべての時間軸が収斂していく。
ああ、うわべの映像の裏にはこんな事が隠されていたのか。
すとんと見事に全部の断片がつながって物語は終わっていく。

さすがにクリストファー・ノーランと思わせる。
第1作から只者ではなかったのだな。