あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。1800本余りの映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。

「チェンジリング」 (2008年)

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2008年 アメリカ 142分
監督:クリント・イーストウッド
出演:アンジェリーナ・ジョリー、 ジョン・マルコヴィッチ

行方不明になった我が子をさがす母の戦い。 ★★★★☆

1920年代のロサンゼルスで実際に起きた事件の映画化。
シングル・マザーのクリスティン(アンジェリーナ。ジョリー)は電話局で働きながら一人息子のウォルターを育てていた。
ある日、突然失踪したウォルターは5ヶ月後に保護されるのだが、戻ってきた少年は別人だった。
しかし、警察は捜査ミスを認めようとはせずに、クリスティンが錯乱していると逆に圧力を加えてくる。

映画は、悪逆ともいえる権力に立ち向かって我が子を取り返そうとする母親の強さを描いているように見える。
たしかに、クリスティンに協力して警察権力と闘ってくれる牧師(ジョン・マルコヴィッチ)が重要な活躍をして、非道な権力はついにその過ちをただすことになる。
しかし、ウォルターは未だ戻ってきていない・・・。

この映画で最も考えさせられたのは、希望というものの残酷さであった。
(映画の最後で、クリスティンは振り返りながら「Hope!」と言う。)

ウォルターの死が確認されないかぎり、彼がどこかで生きているという希望が残ってしまう。
希望が残っているあいだは諦めることはできなくなる。
それがクリスティンの生きることのすべてになってしまう。
彼女を終始支えてきた牧師が、もう新しい人生を生きるべきだ、と忠告するが、彼女は希望が残っているために耳を貸そうとしない。

(以後、ネタバレあり)

希望にも2段階があった。
死刑執行を明日にひかえた少年連続殺人犯に、クリスティンンは、ウォルターを殺したのかとすさまじい執念で問いつめる(この緊迫した場面はすごい)。
しかし、犯人はその問いに最後まで肯定も否定もしないままに死んでいく。
だから、ウォルターが生きているかもしれないという希望は、否定されなかったという消極的な存在として残ってしまったのだ。

そしてさらに物語の終盤、ウォルターと一緒に軟禁から脱走に成功した別の少年が現れる。
彼はウォルターとは別々に逃げたのでその後の彼の消息は知らないと言う。
しかし、ここでウォルターが生きているかもしれないと言う希望は、あり得るという積極的な希望としてクリスティンに与えられる。

その後、生涯クリスティンはウォルターを探し続けたという事実が語られて映画は終わる。
ウォルターがどこかで生きているかもしれないと言う希望は、クリスティンに何をもたらしていたのだろうか。
希望が、彼女の生きることそのものだったのだろう。

ある意味で、希望は彼女にとても残酷なことをしたのではないだろうかという風にも思ってしまうのだ。

そんなことを思わせるほど、人生の残酷さの前でか弱く翻弄され、また信念のゆえに強く生きていく一人の女性を、アンジェリーナ・ジョリーは見事に演じきっていた。
前作「ウォンテッド」とは全く正反対ともいえる役柄である。
セクシーさなどはすべて捨て去り、母としての存在感そのものになっていた。

すごい。