1962年 日本
監督:黒澤明
出演:三船敏郎、 仲代達也、 加山雄三、 小林桂樹
黒澤時代劇の代表作の一つ。 ★★★★
さすがと言うべきか、全くゆるみのない脚本、しっかりとした画面、適度に加わるユーモア、この手の映画としては完璧と言っていい。
藩の改革を志す若手侍たちは、若々しい意欲に燃えながらも世間知らずの頼りなさがよく表れていて、それによってさらに引き立つような三船のどっしりとした存在感はすばらしい。
しかも、ただ強いだけではなく、どことなくお人好しでぬけたところを併せ持っているところが、人物造形として深みを出している。
ストーリー展開も、今観てもまったく無駄がなくスピーディである。
三船が名を問われて適当に答える場面や、切り込む手はずの若侍たちへの合図として小川に花を流す場面など、椿の花が要所要所で生きている。
これがカラー映画であったらどのような画面になっていたのだろうか、とないものねだりの想像をしてしまうほど。
随所に嫌みのないユーモアもみられる。
たとえば、軟禁から助け出してやった奥方に、むやみに人を殺してはいけませんと怒られた三船がしゅんとする場面とか、押入に閉じこめられている敵方の小侍の小林桂樹が、こちらの作戦に助言をしてまた自分で押入の中に戻っていくところとか。
仲代達也のカツラは、はじめのうちはなんとも珍妙に思える。
やけに禿げあがっているのだ。TVのインタビューで仲代が語っていたところによれば、あのカツラは黒澤監督自らがデザインしたとのことだが、見ているうちに、次第に仲代の役柄のすこし異様なイメージによく似合っているように思えてくるのは不思議。
その仲代と三船が最後におこなう一騎打ちは、時代劇映画史上に残るものであろう。
あの「天国と地獄」でおこなったようなパート・カラーの手法を使っていたら、迫力がさらに増したのではないだろうかと、つい考えてしまう。
うむ、やはり傑作としか言いようがない。
数年前に、織田裕二主演のリメイク版が作られている。観てみたいような、止めておきたいような。