2006年 日本 130分
監督:中島哲也
出演:中谷美紀、 瑛太、 伊勢谷友介
ある女の(惨めな)一代記。 ★★★
不器用なばっかりに、どこまでも不幸な人生になっていく松子の一生を描いている。
お姫様を夢見ていた松子は中学校教師になる。
ところが、修学旅行で1人の生徒が起こした窃盗事件の処理を、まごまごとしたばかりにとんでもないことになっていく。
あれよあれよと、松子のわが身に火の粉が降ってくる。
ついには松子は汚名を着せられて、仕事は首に。
家でもごたごたを起こして、後先も考えずに家出・・・。
とにかく、この松子という人物、すぐにテンパってしまう。
なんとか窮地を脱しようと思いつきで行動するものだから、事態はますます悪くなる。
おまけに男運も悪い。
しょうもない男にばかり惚れてしまう。DVされても、それでも惚れてしまう。
どんなに殴られたって1人でいるよりはいい、という松子の言葉は、あまりにも哀れ。
監督はあの「下妻物語」の中島哲也、
だから画面は毒々しい、どこかチープさを狙ったような原色であふれる。
ときには漫画のような絵面にもなるし、ヒロインが心情を吐露する場面では歌謡ショーになったりもする。
あまりにも惨めな一生を、せめてものコミカルな味付けで見せている。
松子の一生を振り返る設定になっているのだが、その年代の流行だったTV番組が上手く使われている。
制作にはTBSが関わっているので、火曜サスペンス劇場の場面も効果的に(?)取り入れられている(笑)。
松子を中谷美紀が熱演。
脇役も豪華。伊勢谷友介に香川照之、柄本明。松子の一生を回顧するのは甥の瑛太。
元AV女優の親友役で黒澤あすかも出ている。
でもこの松子という人物、哀れなのだ。同情されてしかるべき人物なのだ。
松子には、大事な局面になると、寄り眼でおちょぼ口という変顔をしてしまう癖がある。
しかしそれも、幼い頃に自分への愛情が薄かった父を何とか笑わせたいという、必死の子供心から始まったことだったのだ。
2時間越えの長さだが、波瀾万丈の人生なので飽きることはない。
それに回顧という形をとっているので、ケバケバしい画面でありながらも、哀愁も漂ってくるのだ。
生理的に受け付けない人もいるような撮り方ですが、受け入れてしまえば、かなりテンパっている映画だと思うのです。
中谷美紀が日本アカデミー最優秀主演女優賞を取っています。