1956年 スウェーデン 97分
監督:イングマール・ベルイマン
神はどこにいる? ★★★
今、このコロナ禍の時代に見るべき映画かということで鑑賞。
10年間の十字軍遠征からの帰途にある騎士アントニウスと従者のヨンス。
これだけ神のために闘ってきたというのに、神は一向にあらわれず、人々を救ってもくれない。
地上にはペストが蔓延し、人々は次々に死んでいく。
冒頭で、アントニウスは黒装束の死神とチェス盤を間に向かい合っている。
有名な場面である。
顔面以外を黒服でおおった死神の姿は象徴的で、もしかすればジプリ作品にも影響を与えているのかもしれない。
聖書に拠れば、第七の封印が解けるときに最後の審判が始まるという。
そしてキリスト教信者は天国に行けるようなのだ。
しかし、その最後の審判をおこなう神はどこにいるのだ?というのが、どうやらこの映画の主題のようだ。
アントニウスとヨンスはいろいろな人々と出会う。
幼い子供を連れた旅芸人夫婦、ヨンスが暴漢から救った女性、堕落した神学者、妻が駆け落ちをしようとした鍛冶屋夫婦。
そして十字架を背負ったり自らを鞭打って神の赦しを乞う一団。
疫病を流行らせた魔女として民衆に攻められる女性・・・。
この映画はキリスト教に精通していないと、その寓話性がほとんど理解できないのかもしれない。
無宗教の私には、映画が意味しようとしたものはまったく理解できていないのだろう。
ただ物語と映像を味わった、ということになる。
しかし、宗教的なことを離れても、美しいモノクロ映像と詩的な台詞を楽しむことはできた。
最後の場面では、旅芸人一家は、夜が明けた丘の上を死神に先導されて手をつないで歩むアントニウスらを遠望している。
黄泉の国へ向かう死の舞踏なのだろう。
カンヌ映画祭で審査員特別賞を受賞しています。
この映画の直後に撮った「野いちご」ではベルリン映画祭の金熊賞を受賞しています。