あきりんの映画生活

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「ザ・クロッシング Part Ⅰ & Ⅱ」(2014年、2015年)

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Part Ⅰ:2014年 中国 129分
Part Ⅱ:2015年 中国 126分
監督:ジョン・ウー
出演:チャン・ツィイー、 金城武、 ソン・ヘギョ、 ホァン・シャオミン、
    トン・ダーウェイ、 長澤まさみ

歴史の中で交差する三組の男女。 ★★★☆

 

ジョン・ウー監督といえばアクション映画の巨匠。
そのウー監督が撮った豪華スターの共演の大河ロマン。
前・後編の2部構成で、合わせれば4時間越えの作品。いったい、どんなや?

 

太平洋戦争の末期、日本が中国から撤退すると、中国国内では国共内戦が起こる。その時代に、歴史に翻弄された3組の男女を描いている。

国民党将校イーファン(ホァン・シャオミン)とその美しい若妻ユンフェン(ソン・ヘギョ)。
素朴な兵士ターチン(トン・ダーウェイ)と必死に故郷の幼なじみを捜す従軍看護師チェン(チャン・ツィイー)。
台湾人医学生ザークン(金城武)と日本人女学生(長澤まさみ)。

 

原題は「太平輪」。
これは1949年に衝突事故で1000人以上の死者を出した大型船の名前。
そうなのだ、これはジョン・ウーが撮った「中国版タイタニック」だったのだ。
パートⅠでは後にその太平輪に乗り合わせることになる3組の男女の物語が描かれる。

 

日本軍が敗れ中国から撤退すると、今度は国共内戦が激化する。
世情は不安定となり、蒋介石の率いる国民党は次第に劣勢になり、人々は戦火から逃れるために台湾へ移動し始める。

始めは3組の男女の物語が交互に描かれるので、はて、これは誰だっけ? この人はどういう状況になっていたのだっけ? と頭の中を整理しながら観ることになる。

 

将校のイーファンは妻ユンフェンを安全な台湾に疎開させ、自らは内戦の最前線へと向かう。
台湾人の医学生ザークンは、日本人の雅子と恋に落ちるが、彼女は日本に帰国してしまい、
台湾の家には雅子が弾いたピアノと、ザークンが描いた雅子の絵が残される。
出征した恋人を捜すため従軍看護師に志願したチェンは、身分証明書をつくるために、見知らぬ兵士ターチンと偽の家族写真を撮る。
しかし、チェンは台湾に行く船賃を稼ぐために街娼にまで身を落とす。

 

映画では北京語、台湾語、それに日本語が出てくる。
中国語と台湾語がまったく違うらしいことを初めて知った。そうなんだ。
それにしても、金城武はこの3つの言葉を使い分けている。語学が全く駄目な私からすれば、すごいとしか言いようがない。

 

ソン・ヘギョは数人しか知らない韓国女優さんの中の一人。
イ・ビョンホンと競演したかってのTVドラマ「オール・イン」でファンになった。
で、映画「私の頭の中の消しゴム」も観たのだった。清純な笑顔が可愛い。

 

チャン・ツイィーは薄幸の美女役がよく似合う。
「Lovers」や「「グランド・マスター」などの武侠を演じても、やはりどこかに孤独の影が漂う。
かっては、「初恋の来た道」で、神がかった可愛らしさだと驚嘆したものだった。

 

パートⅡが始まっても、まだ太平輪は出発しない。
船が出航するのは半分ぐらい経ってから。
要するにジョン・ウーは船の沈没を描くと言うよりも、それに乗り合わせた人々の交差する人生を描きたかったのだろう。
白い鳩は飛ばなかった。二丁拳銃の乱射もなかった。
代わりに、海のうえをカモメが飛んでいた(苦笑)。

 

クライマックスは太平輪の沈没場面。
しかし肝心の衝突場面などのセットはあまりにもチープではなかったのかい。
ジョン・ウーともあろう監督が、あのセットで良しと思ったのだろうか。
火薬爆破場面にはうるさいくせに(苦笑)。

 

やはりジョン・ウー監督は恋愛ものにはあまり向いていないのかもしれない。
何を描けば、どんな風に描けば、観客がキュッとなるのかが、もうひとつ判っていないのではないだろうか(と、上から目線 笑)。

 

しかし、戦火に翻弄されて交差する人々の人生ドラマは、見応えはあった。