1981年 フランス 105分
監督:アラン・ドロン
出演:アラン・ドロン、 アンヌ・パリロー
私立探偵もの。 ★★★
あのアラン・ドロンの初監督作品。もちろん主演。
(なんとドロンの61作目の出演作品になるとのこと)
この映画で演じるのはギャングではなく、刑事でもなく、刑事上がりの私立探偵シュカス。
行方不明になった娘の捜索を母親から依頼されたことから始まる事件だが、意外に根が深かったのだ。
何回となく画面に重なるブルース調の歌が、ちょっと哀愁がこもっていてなかなかに好い雰囲気である。
中年になったドロンは少し貫禄のある体型になっていて、映画に出ずっぱり。
まあ、それが目的の映画だからなあ(苦笑)。
物語は、麻薬も絡んだ汚職事件に警察も関与していたという複雑さ。
銃撃戦もあれば(冒頭でドロンはものすごい抜き撃ちを見せてくれる)、高速道路を逆走してのカー・チェイスもある。
サスペンスものとしてはかなり本格的な筋書きを持っている。
重要人物はどんどん死んで行ってしまって、次々に新しい人物が登場してくる。
今はどんな状況になっているんだっけ?(苦笑)
しかし、この映画の魅力は、それらのサスペンス、アクションをつなぐ軽妙な主人公たちのやりとり。
洒落たユーモラスな冗談を言い合う。う~ん、さすがフランス映画(笑)。
秘書シャルロット役のアンヌ・パリローは、この映画のあと、リュック・ベッソン監督の「ニキータ」でヒロインとなる。
角度によってはあの「太陽がいっぱい」のマリー・ラフォレを思わせる。
大きな眼鏡をかけた彼女が無邪気でとてもチャーミング。
亭主持ちでありながら、シュカスとはしっかりと好い関係になっている。
あっけらかんとしていて、それでいて物語の要所を締める役割だった。
シュカスの銃創をシャルロットが消毒したとき、彼が思わず苦痛の声を漏らす。
すると、彼女は「ベルモンドなら弱音を吐かないわよ」と言い放つ。愉快。
シュカスは、「俺はベルモンドじゃないぜ」と言い返していた。これも愉快。
事件が解決した最後、全身打撲・骨折で病院のベッドに横たわるシュカス。
病室から帰ろうとした仲間の刑事に、シュカスはギブスの先端にわずかに見えている手足の指先を全部振る。
なんとドロンのユーモラスで、可愛いことか。
少し古い雰囲気のハードボイルドものといったところで、充分に観るに値する作品だった。
しかし、謎解きサスペンスというよりは、雰囲気を楽しんで、ドロンやパリローの掛け合いを楽しむ、そんな映画。
「ニキータ」のときとは違うチャーミングなアンナ・パリローを楽しみましょう。
彼女の存在で★半分がおまけされた?