1972年 イタリア 110分
監督:ドゥッチ・テッサリ
出演:アラン・ドロン、 リチャード・コンテ、 カルラ・グラヴィーナ
殺し屋の復讐。 ★★★☆
約40年前のフランス・ノワール映画(しかし、制作国はイタリアとなっているが)。
まずは画面から漂ってくる雰囲気が好い。
そう、フィルム・ノワールの雰囲気とはこういうものを言うのだと思える。
派手さはないものの、落ち着いた物語展開でじっくりと余韻までも楽しむ、そんな映画である。
家族のためにマフィアの殺し屋から足を洗おうとしたトニー(アラン・ドロン)だったが、最愛の妻子がそのマフィアに殺されてしまう。
トニーは復讐のために、つぎつぎとマフィア幹部たちを冷徹に殺していく。
アラン・ドロンは笑顔を見せない。
哀しみをじっと我慢している男の憂愁である。好いなあ。
ストーリーは単純である。ひねりとかどんでん返しとか、そんな目先のことなぞ一切なし。
じっくりとアラン・ドロンを見せてくれる。これは彼を見る映画なのである。
アラン・ドロンが孤独な殺し屋を演じたと言えば、あの傑作映画「サムライ」がある。
同じように表情を殺した渋いドロンだったが、あちらは虚無的な雰囲気の静謐さだった。
それに引き替え、こちらは家族への哀惜が内側にあるので、激情を押し殺した静謐さといえる。
どちらのドロンも格好好いなあ。
途中でカー・チェイスもある。
狭い街並みを小型車で爆走する。かなりの迫力である。
当時のことだからCGなんか使っていないわけで、今よりもずっと大変だったろうと思う。
トニーに協力してくれるサンドラ役のカルラ・グラヴィーナがきれいである。
彼女は、マカロニ・ウエスタンの悪役で有名なジャン・マリア・ボロンテとの間に子供をもうけているとのこと。へえ。
この映画は、たしか以前に観たことがあったはずなのだが、すっかり忘れていた。
ラストは、こうなるのだったのか!
そうか、こうなるのだったか! すっかり忘れていた。
あの頃のフランス映画らしい(くり返しになるが、これはイタリア制作ですが)ラストなんだろうな。そうか、こうなるのだったか。
ハリウッド製のガチャガチャとした殺し屋もの(失礼!)に食傷したときには、こういった落ち着いた殺し屋ものがいいですよ。